『マッドマックス 怒りのデス・ロード』はなぜ熱狂を生んだ? 『北斗の拳』に通じる精神性
オーストラリア出身の映画監督ジョージ・ミラーが、無名の若手俳優メル・ギブソンを主役に迎えて撮ったバイオレンス・アクション映画『マッドマックス』(1979年)。暴走族一味に妻子を殺された元警官のマックスによる壮絶な復讐劇は、日本を始め世界中でヒットを飛ばし、シリーズ化されるほどの人気作となった。そのシリーズ3作目『マッドマックス/サンダードーム』(1985年)から30年ぶりの2015年に公開されたのが、『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(以下、『怒りのデス・ロード』)だ。
『怒りのデス・ロード』は、『マッドマックス』シリーズの4作目という位置づけでありながら、前作から30年のブランクがあり、主演もメル・ギブソンからトム・ハーディに変わったことなどを含めて、過去のシリーズを知らない人が観ても楽しめるように作られている。映画、アニメなどのシリーズ物が陥りがちな、”前作を観ていないと人間関係や世界観が分からない“といった弱点がないのが本作の利点である。
荒廃した近未来の砂漠地帯で、独裁者イモータン・ジョーは貴重な水源地を中心に砦を築き、ウォー・ボーイズ(WAR BOYS)という私設軍隊を率いて一帯を支配していた。イモータン・ジョーは自身の子供を産ませるべく、5人の若い女性を妻として囲っていたが、女性大隊長のフュリオサは5人を連れて組織から逃亡。幼少期に自分が過ごした故郷・緑の地へ彼女たち5人を逃そうとする。同じ頃、砂漠でウォーボーイズに捕えられていたマックスは、自らの脱出のためにフュリオサの逃亡劇に手を貸すことになる、というのが『怒りのデス・ロード』の大筋だ。男臭いアクション映画ではあるが、老婆を含む女性だけのバイクチームや、シャーリーズ・セロンが頭を丸めて挑んだフュリオサのタフな行動力、フュリオサに連れられて逃亡中の女性たちも足手まといではなく、戦闘補助に参加するなど、女性キャラクターも強く魅力的に描かれている。
『怒りのデス・ロード』は日本公開時にシネコンの通常興行のほかに、声をあげて作品を応援する絶叫上映や、最高の音響設備を誇る劇場での爆音上映など、観客参加型の特別上映企画が各地で行われ、最終的に興行収入は18億円を超えた。なにが観客をそこまで魅了したのか? 地平を埋め尽くす大量のオートバイと4WDのエンジン音、それら車両のクラッシュによる大爆発、アドレナリン出まくりの身体を張ったアクションなど、興奮する要素はいろいろあるが、何といってもウォーボーイズたちのユニークなキャラクター性が大きいだろう。イモータン・ジョーを称えるべく、両腕を高く掲げながら指を交差させて「V-eight! V-eight!」と叫ぶV8ポーズ(これは車のV型8気筒エンジンに由来するもの)、死を決意した時に口元に銀のスプレーを吹く仕草などハイテンションな行動の数々が観客に大受けした。