白石聖の主演抜擢は大正解の人選! 『恐怖新聞』をナチュラルに“真実”にさせる実力

 2019年に同枠で放送された『絶対正義』では、何よりも正しさを求める母に育てられたことで、法律に基づく「正義」だけを妄信する高規範子(山口紗弥加)の高校生時代を演じていた。

『絶対正義』(c)東海テレビ

 綺麗に上がった口角と、何かに憑かれたような真っすぐで虚ろな目で問いかける「私、何か間違ったこと言ってる?」は純粋な恐ろしさを漂わせていた。そんな少女パートがあっという間に終わってしまい、残念だと思っていたところ、終盤では範子の娘として再登場。見た目はソックリなのに、明らかに「別人」に見える娘の歪みぶりは、確かな実力を感じさせられるものであった。

 また、森下佳子脚本のNHKのよるドラ『だから私は推しました』では、桜井ユキ演じる主人公の「推し」となる、歌もダンスもダメダメな地下アイドルを演じていた。「かわいいけど、鈍くさくて暗くて、人見知りで、ちょっと挙動不審」なハナちゃんは、あまりにリアル。さらに、後半で見えてくる、注目を浴びるための虚言などの痛々しさ・闇は、「偶像」を超えたハナちゃんの生々しさを強く印象付けるものだった。

『PRINCE OF LEGEND』(c)「PRINCE OF LEGEND」製作委員会 (c)HI-AX ALL Rights Reserved.

 かと思えば、映画『PRINCE OF LEGEND』では、王子たちの憧れの存在で、真っすぐで潔く、内に秘めた熱さ、芯の強さを持つヒロインを魅力的に演じていた。

 ちなみに、バラエティ番組『スクール革命』(日本テレビ系)では、女子生徒の一人として、素の顔を見せているが、独特の不思議な「間」と、理解不能な思考回路で、すっかり「団体芸」となっているレギュラーメンバーの中にすんなり馴染みつつも、他の誰ともカブらない強烈な個性を放っている。

 特に彼女の女優としての資質に惹かれてからは、「素」の部分もまた面白く、気になって仕方ない存在となっている。

 怖いくらい整った顔なのに、全身から立ち上る不思議なアンバランスさ、不安定さ。それはホラーでも、バラエティでも、視聴者の視線を釘付けにし、ワクワクさせてくれる物語性を孕んでいる。

 むしろ『ゼクシィ』CMで見せている、どこにもアンバランスさのない爽やかな美人ぶりが、ちょっと奇妙に思えるほどに、美人なのに“ひっかかり”だらけの個性派女優なのだ。

■田幸和歌子
出版社、広告制作会社を経てフリーランスのライターに。主な著書に『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)などがある。

■放送情報
オトナの土ドラ『恐怖新聞』
東海テレビ・フジテレビ系にて、毎週土曜23:40〜放送
出演 :白石聖、佐藤大樹、駿河太郎、横田栄司、片山友希、坂口涼太郎、猪野学、黒木瞳
企画:市野直親(東海テレビ)
原作:つのだじろう『恐怖新聞』
シリーズ構成:乙一
脚本:高山直也
音楽:兼松衆
プロデューサー:後藤勝利(東海テレビ)、小松貴子、齋藤寛之、竹内絵唱(松竹株式会社)
協力プロデューサー:松本圭右(東海テレビ)
演出:中田秀夫、服部大二、井上昌典
制作:東海テレビ放送、松竹株式会社
(c)東海テレビ
公式Twitter:https://twitter.com/tokaitv_dodra
公式Instagram:https://www.instagram.com/dodra_tokaitv/

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