『MIU404』伊吹と志摩が絶望を乗り越え踏み出した第一歩 ラスト5分、全てが一変する

 間一髪のタイミングで、井戸に沈められたハムちゃんと成川を見つけ出した伊吹と志摩。最悪の事態に至らず「間に合った」と唇を噛み締め、震える手で互いを手繰り寄せる。それは、もう誰も救えないのではないかと思われた2人の絶望から這い出た第一歩。そして、九重(岡田健史)もまた成川を救助することで、自分自身が救われる思いでいた。あの日、こうやって手錠をかけられていれば……思わずこみ上げた言葉は「全部聞く」の言葉だった。

 そして、いつも冷静な桔梗が「目の前だよ!」と声を上げる姿に、彼女がハムちゃんのそばで感じてきたものの大きさをうかがい知ることができる。数の論理で見捨てられそうになる人の力になれずして、何が警察だと憤りを抱えてきたのだろう。「女だから」「弱いから」と怯えるハムちゃんと過ごしながら、ずっと悔しい思いをしてきたに違いない。

 事件は無事に解決し、誰も死ななかった。そう安堵した矢先のラスト5分で事態は一変する。逮捕されたエトリが乗る警察車両が、久住の仕込んだドローン爆弾によって爆発。「或る一人」とは、「ワル」の顔しかわからない本名のない男、エトリのことだった。てっきりエトリの手先かと思われた久住が、ナウチューバーのランキングを操作するかのごとく、いとも簡単にエトリをリモコンで消せる本丸だった。そう「人の良さそうな兄ちゃん」として笑顔で近づいてくる「悪」もいるということ。

 この社会にはびこる「悪」は、エトリのように見るからに「ワルです」という顔をしてやってくるわけではない。ときには、成川のように「助けてほしい」と困っている自分と引き換えに誰かを犠牲にしようと接触してくることもある。あるいは、特派員RECのように「いち早く情報を届けるんだ」という正義感を振りかざして後をつけてくることもある。社会を支えるべき組織でさえ、「見える敵から潰す」という大義のもと「悪」とも言える判断をすることがある。

 私たちが「悪」を憎む理由は、善意や親切心を信じられなくなる社会にさせないため。悪い人が捕まって、頑張ったら報われて、正しいことをした人が後悔しないで済む“表だけの世界”に近づけるのは、どこかの組織に任せることではなく、私たち一人ひとりが見つめていかなければならないこと。もちろん、それは理想論かもしれない。けれど、その理想が思い描けないなんて、404エラーページのごとく存在しない社会も同然だ。

 自分にとってメリットのなくなった“クズを見捨てる”の意味を込めた久住の名前もまた、仮名であることは間違いない。得体の知れない久住と、4機捜はどう戦うのか。それは、簡単に「悪」側になりうる危うい現代で、私たち自身が「より良い未来」を目指せるかに繋がる物語。

■放送情報
金曜ドラマ『MIU404』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:綾野剛、星野源、岡田健史、橋本じゅん、黒川智花、渡邊圭祐、金井勇太、生瀬勝久、麻生久美子
脚本:野木亜紀子
演出:塚原あゆ子、竹村謙太郎、加藤尚樹
プロデュース:新井順子
音楽:得田真裕
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS

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