西野七瀬、『アンサング・シンデレラ』は女優としての重要な一作に 『あな番』からの成長を辿る

 昨年、日本テレビ系で放送された『あなたの番です』(以下、『あな番』)黒島役で、乃木坂ファン以外の視聴者にも、女優として大きなインパクトを残した西野七瀬。現在出演中のフジテレビ木曜劇場『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』第5話での涙の演技も話題となり、第二の主人公とも言える存在感を見せている。

 2クールという長期に渡り放送された『あな番』での黒島沙和役は、当初は事件解明に立ち向かうヒロイン的な立ち位置だったが、最終回での黒幕としての狂気の演技で大きな話題を呼んだ西野。清純派のイメージが強い西野にとっては一見意外性のある役柄だが、シングル「帰り道は遠回りしたくなる」の特典映像『パワハラ部長 西野』のように、関西弁で毒を吐くキャラなどダークな役柄が、実は以前からハマっていた。

 殺人の告白をするときの蔑んだ表情や、ニヤつきながら淡々と相手に死の選択を迫る演技など、『あな番』でもそうした西野のギャップあるダークさが活かされたと言える。ただ、黒島に視聴者が惹かれた本当の理由は、『電影少女 -VIDEO GIRL AI 2018-』(テレビ東京系)でも感じた西野の特徴である、アイドル時代から変わらぬ“儚さ”ではないだろうか。「自分はいつ死んでもいい」という思いが、西野が持つ儚さと重なり、たとえ殺人鬼だとしても魅力的な存在に映ったと考える。

 『あな番』以降も、広瀬すず主演の映画『一度死んでみた』に製薬会社の社員役として出演、劇場アニメ『コルボッコロ』では主演声優を務めるなど幅広く活躍。そして2019年より始まった『サクセス24 インスタグラムストーリー』という、Instagramで毎日数十秒配信されるドラマCMも、『あな番』にも近い、どこかぶっきらぼうな口調とサディスティックなキャラクターで話題を呼んだ。

 そして『あな番』以降、ゴールデン・プライムタイム初ドラマとなったのが『アンサング・シンデレラ』だ。西野演じる相原くるみは、「医者は無理そうだけど、薬剤師なら自分でもできそうだし、医者ほど責任は生じないだろう」という消極的な理由で薬剤部となった新人薬剤師。ただ、ほかの医療ドラマの新人でよくある、大きなミスを犯したり、やる気に欠けていたりするわけではないのが、相原役のポイント。「向いてなかったら、辞めようと思っています」という消極的な言葉も、あくまで相原の素直さから出ている言葉で、ストーリーが進むにつれ、先輩である葵(石原さとみ)が頑張る姿に感化され、相原の中でも変化が徐々に起きてゆく。病院薬剤師とはどんな存在で、医師や患者に対しどんな葛藤があるのか、視聴者と同じ目線でテーマを映し出す、重要な役でもある。

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