『私の家政夫ナギサさん』お手本ではないヒロイン像を描く理由 多様性を認めるキッカケ作りに

 ナギサさんが重い口をやっと開いたにも関わらず、またもやメイは「じゃ!」とすぐさま席を立つという嵐のような行動に出る。“私にできることは……”と、何やら作戦を企てている様子。すると、病院で箸尾を捕まえ、なんとナギサさんの元へ連れてきてしまったのだ。しかも「私、仕事早いんで!」とドヤ顔を見せるメイ。

 箸尾もナギサさんへの感謝の気持ちを伝えたかったという結果オーライな状況だからよかったものの、状況によってはフラッシュバックを起こしかねない難しい場面でもある。しかも、箸尾を見つけたのは、仕事でもないのに病院で張り込みをした後輩・瀬川(眞栄田郷敦)だ。

 さらに、告白してきた田所(瀬戸康史)を置き去りにしているわ、プロポーズしてきた肥後(宮尾俊太郎)のことはちょっと忘れかけているわで、メイを取り囲む相関図はとっちらかったまま。ナギサさんと箸尾に、おせっかいを焼いている場合ではない。

 だが繰り返しになるが、それが“メイならでは”なところなのだ。もっとスマートなやり方があったに違いない。もっと周囲に配慮して進めることもできたはず。しかし、そんな人間関係の整理整頓が苦手で、そんなぐちゃぐちゃした中でも「これは今やる」というものには、全力で取り組めるのがメイという個性。『私の家政夫ナギサさん』は、決してお手本となるような女性ヒロインを描いているわけではない。むしろ、積極的に個性を見せていくことで、私たちが考えていくキッカケをくれる存在だ。

 メイがリーダーとして率いているチームも、最近はオーバーワーク気味だ。もしかしたら、労働時間などの数字を見れば、病んでしまった箸尾と同じように注意が必要な状況かもしれない。でも、彼らは以前よりもイキイキとしているようにも見える。それも“その職場ならでは”な、何かがあるからではないか。

 何時間働いたから、どれだけの案件を抱えていたから……と、一概に線は引けないのが人間だ。多くの人がこなしてきた仕事量であっても、対応しきれない人もいれば、誰もが「無理だろう」という仕事量をガツガツとこなせる人もいる。あるいは、メイのようにグイグイと周囲を巻き込んでいくリーダーが合っている人もいれば、そうではない静かなペースで仕事をすることを望んでいる人もいる。

 メイの行動にも「どうなの?」と思う人もいれば、「いけ、いけ!」と痛快に思う人もいるだろう。いずれにしても“あなたならでは”の感想を持つことは、間違っていない。大切なのは「自分ならこうする」という考えと同じくらい、メイや他の誰かが起こした行動を寛容に思えるかどうか。多様性を認め合うとは、きっとこういうところから始まるはずなのだ。
もはや時代は、一律の何かで縛るのではなく、それぞれの“個性”を伸ばす働き方、生き方へとシフトしていくタイミング。だが、“自分らしさ”をさらけ出すことは、弱みをさらけ出すことにもなる。それは、「強くあれ」と育った世代にとって、とても勇気のいる行動だ。

 でも、メイも自分の弱みを見つめられたからこそ、ナギサさんを生活に受け入れ、人生が豊かになった。誰もが「頑張らなくちゃ」と肩肘張って生きている現代に、「弱み=“自分らしさ”」を見せ合い、その上でお互いで支え合おう。そんな今より少しだけやさしい社会になるようにと、このドラマは温かく見守ってくれている。

■放送情報
火曜ドラマ『私の家政夫ナギサさん』
TBS系にて、毎週火曜22:00〜放送
出演:多部未華子、瀬戸康史、眞栄田郷敦、高橋メアリージュン、宮尾俊太郎、平山祐介、水澤紳吾、岡部大(ハナコ)、若月佑美、飯尾和樹(ずん)、夏子、富田靖子、草刈民代、趣里、大森南朋
原作:『家政夫のナギサさん』(四ツ原フリコ著/ソルマーレ編集部)
脚本:徳尾浩司
演出:坪井敏雄、山本剛義
プロデューサー:岩崎愛奈(TBSスパークル)
製作:TBSスパークル、TBS
(c)TBS

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