『太陽の子』が訴えかけた原爆の恐ろしさ 三浦春馬さんが放送前に語っていた大切なこと
裕之を演じた三浦春馬は本作放送の約1カ月前、7月18日に逝去された。この事実は多くの人の心を痛めただろう。作品中でキラキラと輝く笑顔を見せる彼の姿も、「未来の話をたくさんしよう」という彼の言葉も私たちは忘れずにいたい。8月8日放送の『土曜スタジオパーク』(NHK総合)で内で流れたVTRで、三浦は本作についてとても大切なことを語っている。
「まったく戦争を経験したことのない僕たちがイマジネーションを働かせて、文献をもとにいろんなスタッフ、研究者の協力を得てひとつの台本を作っているわけで。その台本を使い、大きな想像力をお客様に届けていくということが、今後“あってはならない大きな流れをはじめさせないきっかけ”になるんじゃないかということを信じていきたいし、僕もそんな働きの一部になれたらいいなと思いました」
この言葉を噛みしめ、我々は伝えられた物語を真正面からしっかりと受け止めたい。
どの国よりも早く核爆弾を作ることで核をコントロールし、戦争をなくせると思っていた修たちだが、アメリカ軍に先を越され広島に原爆を投下されてしまう。修が心血を注いで研究していた「原子爆弾」というものが、実際に戦争で使用されるとどうなるのか。修は身を持ってその答えを体験する。一瞬で人を炭にする強い威力と、真っ黒になって街に散乱する死体。さらに修は親と思われる死体に寄り添う子供の姿を発見する。作中では当時の写真をインサートすることで、原爆の恐ろしさをより強く訴えかけた。
こうした惨状から目を背けないことは、人が過ちを繰り返さないことに繋がるであろう。その後、修は原子物理学者の端くれとして、京都に落とされる予定だという原爆の爆発の瞬間を見に行くと宣言する。「僕は進みます、未来の話をするために」といっていた修の未来とはどのようなものだったのか。我々の暮らす日本は“幸せな未来”になっているだろうか。
■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter
■放送情報
『太陽の子』
出演:柳楽優弥、有村架純、三浦春馬、三浦誠己、宇野祥平、尾上寛之、渡辺大知、葉山奨之、奥野瑛太、イッセー尾形、山本晋也、國村隼、田中裕子ほか
作・演出:黒崎博(NHK制作局)
音楽:Nico Muhly(ニコ・ミューリー)
制作統括:土屋勝裕(NHK制作局)、浜野高宏(NHK編成局)、山岸秀樹(NHK広島局)
共同プロデューサー:Ko Mori(コウ・モリ ELEVEN ARTS)、佐野昇平(KOMODO Productions)
共同制作:ELEVEN ARTS Studios
写真提供=NHK