『竜の道』怪演女優・松本まりかが見せる自由な姿 ターゲットとなった松本穂香の運命は?

 『竜の道 二つの顔の復讐者』(カンテレ・フジテレビ系)は第2話から、復讐相手である霧島源平(遠藤憲一)の家族の綻びが色々と見え始め、一触即発な霧島家の食卓の様子が印象的だった。その中でもいかにも暗躍しそうなのが、長女のまゆみを演じる松本まりかだ。彼女が登場するだけで「何かあるに違いない」と観る者の心をざわつかせ、その特徴的な甘美でありながら毒々しさも秘めた声、目線の送り方、滲み出る危うさで、観る者の心を離さない。登場後にも尾を引く余韻を漂わせ、「綺麗な薔薇には刺がある」「甘い蜜には毒がある」を地でいく、劇薬的存在だ。

 松本が注目を浴びたのは、『ホリデイラブ』(テレビ朝日系)で演じた“あざと可愛い”改め“あざとホラー”な妻・里奈役。不倫相手への異様なまでの執着心を見せ、欲しいもののためには手段を選ばない、「他人の不幸は蜜の味」を信条にしているかのような役どころ。かと思えば、現在放送中の『妖怪シェアハウス』(テレビ朝日系)ではお岩さん役で、主人公の澪(小芝風花)の世話を焼きながらミソジニーに立ち向かう。お岩さん役は言わずもがな(そもそも設定が妖怪)、また里奈役でも見られた彼女の「怪演」。「怪演」と「執着」は表裏一体、あまりに思い入れが強く心の底から欲するものがあるがゆえ、人は狂わしいほどにそれに惹かれ魅せられてしまうのだ。ある意味、この構造は非常にわかりやすい。

 しかし、本作でのまゆみは一見何にも執着していないかのように見える。それでも、このまゆみの中に確かに巣食う狂気性や歪み、そして諦めを松本は見事に演じて見せてくれている。彼女は慢性的に何処か満たされていないようだ。対峙する相手に常に「それだけ?」「もっと他に何かないの?」と、“もっともっと”を要求する。彼女にとってそれはどこかゲームのようでさえある。

 社長令嬢、容姿端麗、今をときめくフードコーディネーターという肩書き、見せかけの“完璧な理想の家族像”。余りある程の称号を並べてみたところで、それは所詮実態を伴わないもの。自分が、また霧島家が容器ばかり華やかで中身は空っぽ、虚無な存在であることがより浮き彫りになるばかり。「(実際には)何もない自分」を自覚しているからこそ、目の前の相手を試してみては「自分のためにどこまで投げ捨ててくれるのか」を確かめずにはいられない。

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