『M 愛すべき人がいて』伝説の「appears」も再現 最終回放送後には浜崎あゆみのコメントも

 『M 愛すべき人がいて』(テレビ朝日×ABEMA)の最終回が7月4日に放送された。

 6月6日に放送された副音声リミックスの中で、伊集院光が『M』を大河ドラマに例えていたことがある。我々はドラマのアユ(安斉かれん)とマサ(三浦翔平)を通して、浜崎あゆみと松浦勝人の物語、史実を追体験、もしくは初めて知っていくのだと。

 最終回は幸せの絶頂にあった2人の悲しき選択を、視聴者が答え合わせをしていくような回だ。“絶望3部作”と呼ばれアユが悲しき思いを歌詞に落とし込んだ「vogue」「Far away」「SEASONS」。その裏には3つのビッグプロジェクトを抱えるマサと、スターに上り詰めたアユのすれ違いがあった。「悲しみが人を助けることもある」。結婚という幸せに向かってアユと一緒になるのか、それともアーティストとして自立したアユを見守っていくのか。マサが取った選択は、礼香(田中みな実)とのキスをアユに見せつけ、さらにどん底に突き落とすことで、自分を忘れさせる。アユはマサがいない方がアーティストとして成長できる、星は孤独だからこそ輝ける。そう判断した上での悲しき決断。それが神様に選ばれたアユの運命だった。

 浜崎あゆみが『ミュージックステーション』(テレビ朝日)で「appears」の出だしで歌えなくなる場面はあまりにも有名だ。『M』ではその様子が忠実に再現される。アーティストとして必死に歌い切ろうとするアユと瞳に涙を見せながらも彼女のパフォーマンスを見つめるマサ。やがてアユは最後のラブレターとして「M」を送る。〈理由なく始まりは訪れ/終わりはいつだって理由をもつ……〉。改めて歌詞を辿ると、寂しがり屋な少女が大人になっていく、悲しき物語が描かれているとに気づく。

 『M』がここまでの話題作となったのは、大映ドラマを下地にした個性豊か過ぎる一人ひとりのキャラクターが多分にある。「演技が下手なんじゃないのか?」と副音声でも心配されていたアユの最終回に向けた成長、マサのバイタリティの裏に眠る悲哀、神出鬼没の天馬(水野美紀)、毎週絶妙なチョイスで弾き語りを届けてくれたバーの佐山(水江建太)、そしてこのドラマを盛り上げた立役者と言っていいのが礼香だ。「許さなーーーーーーい!」から端を発した礼香劇場は、最終回ではアユの塩焼きにかぶりつき、ホラー音とともに眼帯を取り、手術で治った右目をマサに報告する。礼香と言えば、嫉妬で歪んだその狂気が印象的であるが、マサとのキスで悟ったアユへの思い、その心情を表現した涙の演技や、マサの秘書を辞め次の道に歩み出す決意に満ちた表情は、女優・田中みな実の真髄を見せられたような気がした。

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