『鍵のかかった部屋』はやはり傑作だった 大野智VS玉木宏の直接対決の結果は? 

 それにしても凶器に使われたボウリングの球を見ると、本作と同じく貴志祐介の小説を森田芳光監督が映画化した『黒い家』を思い出さずにはいられない。同作のラストでは大竹しのぶが内野聖陽をボウリングの球とともに追い詰め、階段での攻防の末に内野が大竹の頭をボウリングの球で殴打し撃退する。原作小説ではボウリングというエッセンスは登場しておらず、映画オリジナルの要素だったと記憶しているが、今回の『硝子のハンマー』では原作からボウリングの球が凶器として登場している。まるで『黒い家』の映画版脚色へのアンサーと呼べるトリックだったのではないだろうか。

 さて、次回放送が延期となった『SUITS/スーツ2』の代替として8年ぶりに再放送された『鍵のかかった部屋』。第1話と第2話、そしてスペシャル版を挟んで第8話〜最終話までが放送されたわけだが、いわゆる“月9らしさ”はないとはいえ、練りこまれたトリックと登場人物たちのコミカルな掛け合いが絶妙なバランスで混ざり合う傑作だと再確認できた。原作小説のエピソードのほとんどが一気に映像化されたわけだが、それでもすべてではなく、できればまた大野智・戸田恵梨香・佐藤浩市のキャストそのままで残りのエピソードを映像化してもらいたいものだ。

■久保田和馬
1989年生まれ。映画ライター/評論・研究。好きな映画監督はアラン・レネ、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■放送情報
『鍵のかかった部屋 特別編』
フジテレビ系にて放送
出演:大野智、戸田恵梨香、佐藤浩市ほか
原作:貴志祐介『鍵のかかった部屋』『狐火の家』『硝子のハンマー』(角川文庫)
脚本:相沢友子ほか
演出:松山博昭、加藤裕将、石井祐介
プロデュース:小原一隆
協力プロデュース:中野利幸
制作著作:フジテレビ
(c)フジテレビ

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