『愛していると言ってくれ』は年上ピュア男役の豊川悦司が最大の魅力 『恋つづ』佐藤健に匹敵!?

 常磐と同世代の20代女性にとって、豊川演じる晃次は大人の色気がある男性。第4話、海辺で見せた唇をなぞってからのキス、手話で「紘子が食べたい」と伝えてくるなど(!)、随所に恋愛偏差値の高さが表れる。紘子の幼なじみ・矢部健一(岡田浩暉)のような子供っぽさもなく、絵の才能にあふれて自分の生き方を確立し、若さで突っ走る紘子も想定内とばかりに優しさで包み込んでくれる。しかし、後半、その年上の男としての余裕が、逆に紘子を追い詰めることにも。やはり年齢差のある恋愛は難しいんだなぁと思わせるあたり、“恋愛の神様”と呼ばれる北川悦吏子脚本らしいリアルな展開になっている。

 このときの豊川の身体性は現在の若手俳優に比べても高い。180cm越えの長身で手足も長く、シンプルな白いシャツを着ていても、サマになる。そんな彼が20cm身長の低い常磐に対して身を屈めながら懸命に手話で語りかけてくれるから、身長差萌えが生まれ、大型犬がなついてくるようなギャップも味わえる。

 そんな豊川は『愛していると言ってくれ』で熱狂を呼び、ファンが急増。当代一の色男はキムタクか“トヨエツ”かと比較されるほどの人気に。この2年後の1997年には人間ドラマの名作『青い鳥』(TBS系)にも出演しているが、豊川の主演作では純粋なラブストーリーは少ない方。連ドラでは他に脚本の北川と再び組み、中山美穂と共演した『Love Story』(2001年/TBS系)ぐらいしかない。近年はサスペンスや時代劇への出演が多くなっているので、ここはぜひ続けて『Love Story』も再放送してほしいところだ。

 『愛していると言ってくれ』が放送された1995年から10年ほど経つと、恋愛ドラマは視聴率が取れなくなり、ラブストーリー冬の時代に突入。そこからもう1周回って、ここ数年は『中学聖日記』(TBS系)、『恋はつづくよどこまでも』(TBS系)などがヒットし、恋愛ドラマ復権の兆しもあるが、少女漫画ベースのものが中心なので、物足りない思いをしている視聴者も少なくないだろう。『愛していると言ってくれ』のような大人の男性が魅力的に描かれるドラマも作られることを期待したい。当時の豊川と同じ33歳の松下洸平(『スカーレット』)と広瀬すずの組み合わせでリメイクなんて、どうだろうか。

■小田慶子
ライター/編集。「週刊ザテレビジョン」などの編集部を経てフリーランスに。雑誌で日本のドラマ、映画を中心にインタビュー記事などを担当。映画のオフィシャルライターを務めることも。女性の生き方やジェンダーに関する記事も執筆。

■放送情報
『愛していると言ってくれ 2020年特別版』
TBS系にて放送 ※一部地域を除く
6月14日(日)14:00〜17:00
6月21日(日)14:00〜17:00
出演:豊川悦司、常盤貴子、岡田浩暉、余貴美子、鈴木蘭々、矢田亜希子、吉行和子、橋爪功ほか
脚本:北川悦吏子
プロデューサー:貴島誠一郎
演出:生野慈朗、土井裕泰、福澤克雄
音楽:中村正人(DREAMS COME TRUE)
主題歌:DREAMS COME TRUE「LOVE LOVE LOVE」
製作著作:TBS
(c)TBS

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