伊藤健太郎×カンチ、石橋静河×リカの見事なアレンジ 『東京ラブストーリー』平成版との違いは?

 また完治とリカの関係に影響を与える、三上健一と関口さとみの存在も見逃せない。三上を演じたのは、NHK連続テレビ小説『なつぞら』をはじめ、さまざま作品で存在感を放つ清原翔が担当。歩くだけで注目され、好きになった女性には積極的にアプローチするモテ男を演じ、毎放送女性の視聴者をドキドキさせた。最終回で高田里穂が演じる尚子の結婚式に乗り込み、手を繋いで花嫁を連れ去る『卒業』(1967年)のような名シーンも話題に。

 そんな三上と付き合っている時に、浮気を疑って三上のスマホを見てしまったり、SNSで尚子の存在を特定する現代的な関口さとみの姿も注目を浴びた。さとみは三上と喧嘩するたびに完治を呼び出して惑わせる、視聴者を悶々とさせてしまう存在で、平成版のさとみを演じた有森也実の事務所には番組終了後に視聴者から脅迫状が届いたという。そんなさとみ役に、現代版はE-girlsのメンバーである石井杏奈が挑んだ。普段はパワフルで本格的なパフォーマンスをステージで披露している石井だが、ドラマの中では表情が一変。完治と三上にとってマドンナ的な存在でありながら影のあるさとみを、憂いを帯びた表情と喋り方で見事演じきった。反感を買いやすい役どころだが、リメイクされたさとみは前よりも親しみやすさがアップしていたように思える。特に恋人に対して疑心暗鬼になり、自分でも嫌になるほど依存してしまう恋愛あるあるには、思わず共感してしまう視聴者もいたのではないだろうか。

 多くの人が携帯やスマホを持つようになったこの時代に完治とリカはすれ違えるのか、という疑問が挙がっていた現代版。その壁を逆手に取り、現代版はいつでも離れた人と繋がれるからこそ、“心”がすれ違ってしまう可能性を提示してくれた。ただし時代は移り変わっても、恋する人たちの葛藤や喜びは変わらない。『東京ラブストーリー』現代版はただのリメイクではなく、時代性の反映と都会的な演出、若者のセンスに刺さる主題歌「灯火」(Vaundy)の起用によって、幅広い年齢層の視聴者から反響を呼ぶドラマとなった。

■苫とり子
フリーライター/1995年、岡山県出身。中学・高校と芸能事務所で演劇・歌のレッスンを受けていた。現在はエンタメ全般のコラムやイベントのレポートやインタビュー記事を執筆している。Twitter

■配信情報
FODオリジナルドラマ『東京ラブストーリー』
FOD、Amazon Prime Videoにて、配信中
出演者:伊藤健太郎、石橋静河、清原翔、石井杏奈、眞島秀和、高田里穂、手島実優、飯田隆裕、松尾英太郎、ぎぃ子、永岡卓也、フィガロ・ツェン、筒井真理子
原作:柴門ふみ『東京ラブストーリー』(小学館ビッグスピリッツコミックス刊)
脚本:北川亜矢子
音楽:戸田信子
企画・プロデュース:清水一幸
プロデューサー:森谷雄、森本友里恵
演出:三木康一郎、永田琴、山本透
制作協力:アットムービー
制作著作:フジテレビジョン
(c)柴門ふみ/小学館 フジテレビジョン
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/tokyolovestory/
FOD配信ページ:https://fod.fujitv.co.jp/s/genre/drama/ser4h06/

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