『野ブタ。をプロデュース』が描く青春の葛藤 将来に悩む人へのヒントが詰まった特別編に
中島健人と平野紫耀が共演する新土曜ドラマ『未満警察 ミッドナイトランナー』(日本テレビ系)の撮影再開の見通しがいまだ立たないことから、このまま『野ブタ。をプロデュース』が最終話まで放送されることが先日発表された。当初は2週間だけだった予定が少しずつ延ばされても、「特別編」と銘打った事実上の再放送であったからこのような異例の事態に対応できたのであろう。ましてや5月16日に放送された第6話で描かれたのは主人公たちが将来の進路に悩む姿。休校状態が続き、普段以上に将来への不安を抱えてしまうことになった現代の学生たちにとって、このエピソードは単なる再放送以上の意味があったのではないだろうか。
往々にして学園ドラマにおいて、“進路”というテーマは青春時代の終わりを予感させる極めて重要なエッセンスとなりうるものだ。同時に、ドラマ自体が終盤に差しかかる、卒業などの別れの時が近付いていることを明確に示してくれる。父親の会社を継ぐべきかどうかで悩む彰が呟く「覚悟が決まんない。まだ17だよ。これから先、何十年も続く人生をなんで今決めなきゃダメなんだよ」という言葉であったり、通学途中で修二と彰がくたびれたサラリーマンたちを見つめるシーンであったりと、とりわけ高校生の頃に誰もが一度は考える悩みが極めてストレートに描写されていくのである。
もちろんその答えは人それぞれまったく異なるものであるが、このエピソードでは答えを見つけるためのヒントを提示してくれる。それは野ブタグッズを作って売りさばくという発想と、嫌がらせを受けても「次に行けるから」とさらに前を向こうとする姿勢。このドラマが放送された2005年当時は、いまほど自分たちで“発信する”、ないしは“表現する”方法は確立していなかった。けれども今は極めて容易な形でそのチャンスが開かれ、無限に選択肢がある時代になったように思える。具体的な大学名を記してそれを目指すことも重要ではあるが、それはあくまでも「道端の十円玉」「笑って生きる」「ちゃんとした人間になる」といった、さらに先の自分がどういう風にありたいのかを見つける手段でしかないのだと、このドラマは気付かせてくれのではないだろうか。