時代の寵児となった菅田将暉 煌めきを放った映画で振り返る“表現のベース”

菅田将暉、映画で振り返る“表現のベース”

『ピンクとグレー』(2015年)

『ピンクとグレー』

 思い返してみると、今これを書いている筆者が初めてきちんと“菅田将暉”という役者の名前を読めるようになり、かつ、強烈な印象を植え付けられたのは、この『ピンクとグレー』だった。NEWS・加藤シゲアキの小説デビュー作として話題になった原作に、行定勲監督がかなりアレンジを加えたミステリー作品だが、この非常に特徴的な作品の構造に見事に即した菅田将暉の大胆な豹変っぷりに、一体何が現実なのか、観ているこちらも恐ろしいまでに惑わされること間違い無しである。ちなみに、加藤シゲアキのその後の小説も読むことで、彼自身が作品内で読者に向けて手のひらをひっくり返すようなミステリアスな表現を好んでいることがよくわかるのだが、今思えばこの映画化における菅田将暉は、そういった加藤作品の特徴を出演者のなかでもとりわけ楽しんで演技をしていたのではないか、ということに気づかされる。菅田将暉が持つ多様な魅力の振れ幅の原点ともいえる作品だ。

 2020年からこの先も、中島みゆきの「糸」の世界を映画化した瀬々敬久監督による『糸』や、坂元裕二脚本による『花束みたいな恋をした』、そして、松竹映画100周年を記念した山田洋次監督、原田マハ原作による『キネマの神様』など公開作が多数待ち受ける菅田将暉。今やその一挙手一投足がすべてニュース化されるほどの人気者だが、着実に積み上げてきた映画での表現のベースを、ぜひ観る側も、折に触れて振り返っておく価値のある唯一無二の演技者だ。

■鈴木絵美里
1981年東京都生まれ、神奈川県育ち。東京外国語大学卒。ディレクター・編集者として広告代理店、出版社にて10年間勤務の後、2015年より独立。現在はWEB、紙、イベントを軸としたコンテンツの企画・ディレクションおよび執筆に携わる。音楽、映画、舞台、テレビ、ラジオなどエンタテイメントを広く愛好。

■公開情報
『糸』
近日公開
出演:菅田将暉、小松菜奈、山本美月、高杉真宙、馬場ふみか、倍賞美津子、永島敏行、竹原ピストル、二階堂ふみ(友情出演)、松重豊、田中美佐子、山口紗弥加、成田凌、斎藤工、榮倉奈々
原案・企画プロデュース:平野 隆
脚本:林民夫
監督:瀬々敬久
音楽:亀田誠治
(c)2020映画『糸』製作委員会
公式サイト:https://ito-movie.jp/

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