『JIN-仁-』共感を呼ぶ、森下佳子の脚本術 『アンナチュラル』の先駆けにも?

 TBS系にて4月18日から3週連続で土曜・日曜に放送中の『JIN-仁-』特別編。いよいよ5月3日に最終回を迎える。大沢たかお演じる主人公・南方仁が作中の感染症・コロリウイルスの治療に奮闘するというエピソードは、コロナウイルス禍に不安を覚える現代の人々の心を勇気づけ、話題を呼んでいる。

 再放送を通じて、作品のメッセージが未だ健在であることはもちろん、改めて感じるのが作品のクオリティーの高さだ。『JIN-仁-』完結編最終回の視聴率は、当時瞬間最高視聴率は31.7%(ビデオリサーチ調べ、関東地区。以下同)を記録。再放送中の現在でも、4月26日分の平均視聴率が、11.9%と、今なお多くの注目を集めていることが分かる。

 ライターの田幸和歌子氏は、「今、改めて観ると当時より違う場面で泣けることが多いですね。Twitterを見てもそういう声を多く聞きます。『JIN-仁-』は、医療もの、歴史大河ロマン、恋愛ドラマ、バディドラマ……とあらゆる要素が入っているんです。そんなあらゆるジャンルを取り入れながらも、人間ドラマという本質的なストーリーを忘れず、愛・信頼というメッセージを伝えている。このことが人気の理由だと思います。特に『アンナチュラル』(TBS系)が成功を収めてから、近年のドラマは他のジャンルと組み合わせたものや、専門的な領域を扱う医療系ドラマが増えましたが、『JIN-仁-』はその先駆けとも言えるかもしれません」と『JIN-仁-』について語る。

 そんな巧みな構成光る『JIN-仁-』において大きな役割を果たしたのが、脚本家・森下佳子だ。

「森下さんにとって意外にも本作が初の時代劇になるんです。そんな初の取り組みながら、江戸時代と現代の人が地続きで生きていることをしっかりと伝えているから、やはり構成がお上手だと思います。また、森下さんは入念なリサーチでも知られていて、まるで実際の医療現場の講義を見ているくらいディテールの細かい描写も入っています」

 大ヒットを収めた本作。再放送の特別編は、今輝くスター俳優のブレイクのきっかけを垣間見れる貴重な機会とも言える。

「内野聖陽さん演じる坂本龍馬が、あらゆる作品の坂本龍馬で一番好きという声も多く聞きます。細かい芝居が上手な方なので、画面のメインじゃない部分で映っていても、思わず目で追ってしまうんですよね。『JIN-仁-』以前の、NHK朝の連続テレビ小説『ふたりっ子』、『ラブジェネレーション』(フジテレビ系)などではインテリ系のクールなイメージがあった中で、男臭くて熱い龍馬役が新鮮でした。以降の新たなイメージを定着させるきっかけとも言えると思います。桐谷健太さんも、本作を経て、コメディだけではない芝居でも話題を呼びましたし、佐藤二朗さんも現在は福田雄一作品などのイメージが強いですが、本作のプライドが高くて腕がある漢方医・福田玄孝がかっこよくて。こういう佐藤さんをまた観たいという方も多いと思います」

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