二階堂ふみ、朝ドラ『エール』で体現する一貫したテーマ 大河でも披露した歌唱シーンにも注目

二階堂ふみ、『エール』で一貫したテーマ体現

 園や行定のほか、入江悠、山下敦弘、蜷川実花など第一線の監督とタッグを組んできた二階堂だが、作り手のイマジネーションを具現化する秘密はその役作りにある。ラジオのゲストで出演した際には「頭のてっぺんから指先までその人の生き様が見えるようにしたい」と語っており(引用:二階堂ふみ、演じる役によって「変えること」とは? | 無料のアプリでラジオを聴こう! | radiko news(ラジコニュース))、役ごとに眉毛の形を変えるなどディテールにもこだわりを持っている。内面化したキャラクターは二階堂ふみというフィルターを通してそれぞれの作品世界に溶け込みつつ、たしかな輪郭を持ってその存在を主張する。

 スクリーンでの華々しい評価と比較して地上波ではやや控えめな印象もあったが、バラエティー番組や大河ドラマへの出演を経て、2019年の『ストロベリーナイト・サーガ』(フジテレビ系)で初主演を飾るなど徐々にその存在が浸透。今回、念願かなって朝ドラのヒロインを射止めた。

 『エール』の音は、「三歩下がって」というこの時代の女性像と対極的なキャラクターだ。第17話で姉・吟(松井玲奈)に連れられて来たお見合いの席で「私は男の後ろを歩くつもりはないから」と言い放ち、第23話でも、裕一の父・三郎(唐沢寿明)に「人を美醜で判断するな。心が美しい人が美しいのです」と主張しており、男女同権を掲げる進歩的な考えを持っている。第1話で、東京オリンピックの開会式直前に緊張からトイレに駆け込んだ裕一を音が探し出す場面があったように、夫に並び立つ姿勢からは音の人生で一貫して描かれていくテーマが見て取れる。

 1人の女性として自立しつつパートナーと手を取り合って進む音について、二階堂は「自分の感情や言葉で表せない思いを音楽にのせるキャラクター」と分析しており(引用:インタビュー 関内 音 役・二階堂ふみさん 仲むつまじく、力強く生きた夫婦を表現したい|NHK連続テレビ小説『エール』)、音の役作りにも表れている。窪田も「この作品の顔は(二階堂)ふみちゃんだと思っている」とコメントするなど(参考:窪田正孝、次回朝ドラ『エール』の“一体感”をアピール 父役・唐沢寿明からは「NHKの看板」の声)、2人の間に共通認識が築かれている様子が窺える。

 男女平等を胸に、戦前から戦中、戦後にかけて激動の時代を生きてゆく音と裕一。朝ドラには多くの主人公カップルが登場してきたが、その中でも屈指の演技派2人がどんな夫婦像を見せてくれるか楽しみでならない。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)〜9月26日(土)
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00〜11:15
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみ、薬師丸ひろ子、菊池桃子、光石研、中村蒼、山崎育三郎、森山直太朗、佐久本宝、松井玲奈、森七菜、柴咲コウ、風間杜夫、唐沢寿明ほか
制作統括:土屋勝裕
プロデューサー:小西千栄子、小林泰子、土居美希
演出:吉田照幸、松園武大ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/

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