濱口竜介『天国はまだ遠い』から小川紗良『最期の星』まで 無料公開中の必見インディ映画を紹介
瀬田なつき監督『あとのまつり』
あとのまつり /What's Done is Done from Natsuki on Vimeo.
未来の映画といえば、瀬田なつき監督の『あとのまつり』(2009年)は突然全ての記憶を失う現象が流行した街を、数十年後の2095年から見つめる。現代の日本に重ね合わせることも可能な予感の映画とも言えるが、それよりもヌーヴェルヴァーグを軽やかに引用して街を駆け抜け、時には踊りながら、時間も空間も飛び越えていく演出の心地よさは、いつまでもひたっていたくなる。
小川紗良監督『最期の星』
それ以外にも、岩切監督の長編第2作『聖なるもの』に主演した小川紗良が監督した『最期の星』(2018年)が、同監督の短篇『あさつゆ』(2016年)と共に公開されている。『最期の星』は早稲田大学在学中に是枝裕和らが監修した実習作品ながら「PFFアワード」にも選出されており、今秋公開予定の長編初監督作『海辺の金魚』の前に、予習の意味もこめて観ておきたい。
こうした作品は、監督たち自身が権利を所有する作品が多いこともあってスムーズにインターネット上での公開が可能になったようだが、上記の作品はいずれもソフト化されておらず、映画館、それもミニシアターがなければ観る機会はなかったものばかりだ。これらの作品を観れば、若き才能を発見し、惚れ込み、リスクを背負って上映を続けてきた映画館の存在にも思いをはせてもらえるのではないかと思う。
今、全国のミニシアターは存続の危機に瀕している。「ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金」をはじめ、映画館を応援するプロジェクトが幾つか立ちあがっている。それ以外にも劇場の会員になったり、回数券を買ったり、映画館を応援する方法は無数にあるので、自分なりの形で身近な映画館を応援してもらえると嬉しい。
そしてアフター・コロナの世界で、再び映画館が再開されたときには、ここで見つけた監督や出演者たちによる新たな映画たちを、ぜひ観に駆けつけてもらいたい。ーーつまりこの無料公開は、“あとのまつり”に向けての前夜祭でもある。
■モルモット吉田
1978年生まれ。映画評論家。「シナリオ」「キネマ旬報」「映画秘宝」などに寄稿。