『麒麟がくる』影の主役・帰蝶が尾張で奔走 川口春奈が見せる“心の内”

 十兵衛の結婚という祝い事と並んで、尾張では信長の乱心ぶりや信秀が亡くなるなど落ち着かない様子を見せる。そんな中で帰蝶は、見事に信秀から本音を聞き出し、信長をなだめることに成功するのであった。「美濃のマムシ」と呼ばれる斎藤道三の娘だけあって、帰蝶は度胸も手練も見事なもの。弱っている信秀を相手に「東庵を呼ぶ」という交換条件を付きつけて情報を引き出した。そして信長に「信秀は信長を家督にするつもりだ」と話し、ふてくされていた信長の笑顔を引き出し士気を高める。

 だが、この信秀からの言葉の真相は、帰蝶のみぞ知るもの。帰蝶が信長に話したことが真実であるか、そうでないかは定かではないが、父母の愛情を求め続けていた信長が一番に欲しかった言葉を伝えることができたのは確かだろう。そしてそれは、帰蝶が信長の気持ちを日ごろからよく理解し、大切に思っていたからこそ成し得たものなのだ。

 帰蝶は優しさだけでなく、強さも併せ持った女性であることがわかる。一方で、十兵衛が嫁をもらったという知らせに対して「チクチクいじめてやろうと思う」と話す帰蝶の心の内はどこか寂しそうにも見える。過去の恋心に想いを馳せる姿から、夫を手のひらで転がす器用な妻までを1回の放送で担う。第12回は、十兵衛の結婚の裏で、人知れず尾張で奔走する帰蝶こそが影の主役だっただろう。

■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter

■放送情報
大河ドラマ『麒麟がくる』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送
BSプレミアムにて、毎週日曜18:00〜放送
BS4Kにて、毎週日曜9:00〜放送
主演:長谷川博己
作:池端俊策
語り:市川海老蔵
音楽:ジョン・グラム
制作統括:落合将、藤並英樹
プロデューサー:中野亮平
演出:大原拓、一色隆司、佐々木善春、深川貴志
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/kirin/
公式Twitter:@nhk_kirin
 

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