『アライブ』これまでのベストエピソードに! 高畑淳子が見せた圧巻の名演技
かつて大腸がんで入院していた小山内(山田真歩)が切迫流産で横浜みなと総合病院に搬送される。彼女は妊孕性温存で残した最後の卵子で妊娠していたのだが、エコー検査で肝臓への転移が見つかってしまう。心(松下奈緒)は小山内が妊娠継続に困難な状態であると判断し、母体を優先したいと告げるのだが、小山内から中絶の同意を得られずにいた。3月5日に放送されたフジテレビ系列木曜ドラマ『アライブ がん専門医のカルテ』第9話。これまで本ドラマで繰り返し扱われてきたいくつものテーマを、より深く、そしてより現実的に描きだすベストエピソードとなったのではないだろうか。
抗がん剤治療が母体や胎児に与える影響。これはこのドラマを司るいくつものテーマの中でも繰り返し描かれてきた重要なもののひとつである。それは主に、第2話で乳がんを患い抗がん剤治療を始めることを決めた佐倉(小川紗良)が、第4話で妊孕性温存について考えるなど、将来の妊娠に備える過程としてである。しかし今回の小山内は、実際に妊孕性温存が妊娠へとつながった際にも、あまりにも辛い現実が待ち受けている可能性があるということを示す。現に、終盤で小山内と会って話を聞いた佐倉は、不安げな表情を隠しきれずにいるのである。
またその一方で、先週のエピソードで抗がん剤治療を拒否して退院し、残された時間を自分の好きなように生きるために旅に出た高坂(高畑淳子)が再び病院に運び込まれてくる。それでも「このままでいい」と力なく呟く高坂に、心はACP面談を行って彼女のやりたいことを聞き取り、そのひとつだった「パーティーをする」ことを病室内で実行するのだ。このACPとは、アドバンス・ケア・プランニングの略であり、患者の意思決定能力が低下する前に、終末期を含めた今後について話し合うというもの。少し前に話題になり、本ドラマでも何度か言葉として登場した「人生会議」というやつだ。
こうした、患者のQOL(=Quality of Life)を向上させるための緩和ケアについてというと、本ドラマ内では第3話で末期がん患者と、そしてその時点ではまだ寝たきりの状態だった心の夫・匠(中村俊介)の2人の姿を通して描きだされていた。それを踏まえると、そのエピソードで京太郎(北大路欣也)が匠について「最後は好きな場所で」と提案したことと、今回の高坂の最後まで自分の好きなように行きたいと願うことが結びついているように思える。