戸田恵梨香、年齢を重ねていく佇まいのすごみ 異色作な朝ドラ『スカーレット』を走らせ続けた動力

 いよいよ残り話数もわずかとなったNHKの朝ドラ『スカーレット』。

 改めて今、この作品が長い朝ドラの歴史においてもかなり異色作だったこと、そして、それを成立させたのは、ヒロイン・川原喜美子を演じた戸田恵梨香だったということを感じずにはいられない。

 『スカーレット』というタイトルから、放送開始前にイメージされたのは、燃えるような情熱だ。そして、朝ドラにおいては『風と共に去りぬ』のスカーレット・オハラ→小原糸子の流れから、『カーネーション』のような作品を期待した人は多かった。

 しかし、実際に描かれた情熱の炎に、鮮やかな赤という印象はない。「禍福は糾える縄の如し」とはいうが、喜美子の人生を単純にグラフ化するならば、圧倒的に「禍」が多い歪な縄になるだろう。長い貧乏暮らしや、離婚、息子の病気などなど、あらすじだけを追うと、あまりに救いのない、暗い物語でもある。しかし、そうした様々な苦難を受け入れつつも、不屈の精神で、絶えず炎を燃やし続けなければいけないのが、喜美子の人生だ。

『スカーレット』第105回(写真提供=NHK)

 オーディションでヒロインが選ばれるのが主流だった頃の「若手女優の登竜門」としての朝ドラの場合、新人に近い女優が作品の中で成長していくさまを、周りのベテラン俳優たち・スタッフたちがみんなで支え、見守る構図があった。しかし、牧歌的だった昔の朝ドラに比べ、近年は盛り込む要素が増え、緻密に作られるようになったこと、働き方改革の影響もあって、経験値も認知度もある女優がキャスティングによって選ばれるようになって久しい。

 そんな中でも戸田恵梨香が異色なのは、単に実力・経験値があるというだけでなく、物語の中心に生き続け、炎を燃やし続け、さらにその炎に周囲の俳優たちもスタッフたちも皆、巻き込まれていったこと。いったいどれだけのエネルギー量が、あの細い体にあるのだろうと不思議に思うほどである。もはや作品を走らせ続ける動力自体が、戸田恵梨香だったと言っても良いのではないか。

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