【ネタバレあり】『劇場版ハイスクール・フリート』大和型4隻集合はどう実現した? 監督が語る、戦闘描写の裏側

知名もえかがもっと活躍する幻の初期構想

ーー武蔵を含む大和型の4隻が集合するのは、今作の見どころだと思いますが、この発想は最初からありましたか?

中川:はい。原案の鈴木さんのロマンを実現するということで、初期段階から重要だと考えていました。でも4隻並ぶのが逆に難しかったんです。同じ形の戦艦が4つ並んでいるので、そのままだと実は画にならなくて。綺麗に並ばせてしまうと、コピー&ペーストになってしまう。なので、なるべく並びをずらしたり、バランスや少しだけパースを嘘ついて違う方向に傾けたりと、色々工夫をしました。

ーー計算された絵作りだったんですね。

中川:計算というより1回並べてみたらびっくりするほどコピー&ペーストだったので、そこから試行錯誤したという感じです。あともちろん水平射撃や一斉射撃といった、ミリタリー好きのロマンもしっかり丁寧に描きたいという思いもありました。水の表現が上手くいくのかなど、色々と心配はありましたが、3Dを担当したグラフィニカの方々が非常に良いものを作ってくれて、最初にサンプルとして上がってきた射撃の映像を見て、これはいけるなと思いました。

ーー水の表現というのは着弾して水しぶきが跳ね上がったりとか。

中川:そうです。TVアニメの時は、なるべく作画でやるというコンセプトだったようでした。今回は3Dで描写しているので、そこをデジタルすぎる画面作りになってしまわないように、TVアニメを見ていた方に、いかに違和感なく楽しんでいただけるか気を配りました。

ーー本作では、TVアニメでは武蔵を乗っ取られてしまい、表に立って戦闘を指揮するところが見えなかったもえかが、艦長として戦闘に参加しているところも見どころですね。

中川:もえかに関しては、むしろ少し弱くなってしまったと思っていたのですが、お客さんの反応を見ると、「もえかが活躍してよかった」と言われていて、ホッとしています。実は初期構想ではもっと活躍する予定だったんですが、もえかが活躍しすぎてしまうとましろが最後目立たなくなってしまうので、削った箇所もあったのですがそこは嬉しい誤算でした。

ーーちなみに、その初期構想はどんなものだったんですか?

中川:最後要塞から晴風が脱出するシーンで、本編だとましろがスキッパーで特攻して活路を開くのですが、そこにもえかも同時発射で援護するとか、いろいろと話はあったんです。でも「さすがにやりすぎじゃないか」とか「ましろの活躍が薄まってしまう」という意見があって最終的にあの形に落ち着きました。

ーーそのバージョンも見てみたい気もします。今作全体を通して、中川監督が力を入れたポイントを教えてください。

中川:TVアニメと比べてかなり様々な色を使っているんです。例えば、夕景のシーンでは、TV版は夕景の光は艦内には干渉しないというルールの元で作っていたのですが、今回は夕景の日差しもしっかり艦内に干渉させて、美しい色になるように意識したり、各パート、色を贅沢に使って作りました。

ーーラストシーンの朝焼けは印象的でした。

中川:あれは最初のティザービジュアルと同じ色を使っています。はあえて制作作業を優先してなるべく色数を減らすコンセプトでやっていたとTVアニメに参加していたスタッフから伺っていたので、劇場版でやるからには、もう少し贅沢に色数は増やしていこうと考えていました。

ーー監督が考える本作の注目シーンはどこになりますか?

中川:やはり大和型の描写ですかね。何度もリテイクを出してこだわって作ったので、艦隊描写を楽しんでいただければと思います。

■公開情報
『劇場版 ハイスクール・フリート』
現在公開中
4D版(4DX/MX4D)、2月14日(金)より公開
声の出演:夏川椎菜 、Lynn、古木のぞみ、種﨑敦美、黒瀬ゆうこ 、久保ユリカ 、麻倉もも、雨宮天ほか
原案:鈴木貴昭
キャラクター原案:あっと
総監督:信田ユウ
監督:中川淳
脚本:鈴木貴昭・岡田邦彦
キャラクターデザイン・総作画監督:中村直人
音楽:小森茂生(F.M.F)
CGグラフィック制作:グラフィニカ
制作:A-1 Pictures
配給:アニプレックス
(c)AAS/新海上安全整備局

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