『シロクロ』清野菜名の魅力は「声」にあり? 一人二役で存分に発揮する演技力
そんな、モラルや秩序を無視して自分なりの正義で戦うミスパンダだが、自分の中で作っている勝手な正義感は彼女自身もコントロールされているところが、このドラマの興味深いところ。ダークヒーローの勧善懲悪は表向きで、真のテーマは、レンが変わってしまった10年前の放火事件の真実を思い出して(暴いて)いくこと。レンの姉妹・リコはこの事件で亡くなり、自分が生き延びた代わりにリコが死んでしまったと罪悪感を抱き、PTSDを患い、火に怯える繊細で内気な性格に変わってしまった。
そしてレンを溺愛する母親は事件がきっかけで療養施設で治療を受けている。第二話の最後に「リコが死んでくれて良かった」と黒く塗りつぶされたリコの写真を指でこする母親(山口紗弥加)の姿を見たレンは、小さい頃に母親が1人の娘を溺愛し、檻の中にいるもう1人の娘にバナナを投げつける姿を思い出す。レンは精神科医に治療を受け、何らかの暗示をかけられ過去の記憶を変えられてるような会話があったが、檻=パンダで、そのトラウマがミスパンダを生み出した一つの理由だと考えると、今生きているレンは本当はリコで、自分を隠してレンを演じている可能性がある。また、ミスパンダは直輝によってコントロールされ変身しているが、真実を追求するために実は催眠術にかかったフリをしている可能性も。いずれにしろ、レンとミスパンダの性格が真逆なのは、レンのトラウマやストレスから生み出されたものなのは間違いないだろう。
この日曜ドラマ枠は『あなたの番です』や『ニッポンノワールー刑事Yの反乱ー』など、ミステリーとミスリードに溢れた展開が多いが、どの作品も「人の二面性」が重要になってくる。今作は、清野がレンとミスパンダの分かりやすい二面性だけでなく、実はリコパートの繊細な二面性の演技が一番の見どころで、今後はレンとリコという姉妹の関係をどう演じ、視聴者にさりげなく伝えていくのか。過去と現在、レンとリコ、そしてレンとミスパンダ、様々な人格と向き合う女優・清野菜名の腕の見せどころである。
(文=本 手)
■放送情報
『シロでもクロでもない世界で、パンダは笑う。』
日本テレビ系にて、毎週日曜22:30〜23:25放送
出演:清野菜名、横浜流星、要潤、白石聖、山崎樹範、山口紗弥加、佐藤二朗
監督:遠藤光貴
脚本:佐藤友治、蛭田直美
チーフプロデューサー:岡本浩一(読売テレビ)
プロデューサー:福田浩之(読売テレビ)、馬場三輝(ケイファクトリー)、千葉行利(ケイファクトリー)
共同プロデューサー:池田健司(日本テレビ)
制作協力:ケイファクトリー
制作著作:読売テレビ
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