実写ドラマ、ショートアニメがともに好調 『ゆるキャン△』の魅力を改めて振り返る

 本作を見ていると、キャンプをやりたくなる人も多いだろう。リアルキャンプへの導線として、京極監督の仕掛け作りもまた巧みだ。まず、原作との相違点として解説パートにリンとは異なる第三者として、大塚明夫のナレーションを据えたことが挙げられる。このナレーションによって、アニメの枠を越え、まるでキャンプのプロに直接手ほどきを受けている気分になってしまうのだ。一人キャンプ中に大塚明夫の声が脳内で聞こえてきそうだ。これなら一人であってもキャンプを楽しめるのではないだろうか。

 さらに、キャンプの醍醐味といっても過言ではないキャンプ飯を作るシーンは多くのカットが割り当てられている。キャンプにおける背景と音楽に勝るとも劣らない重要な要素と言えるだろう。アニメーター出身の京極監督も料理シーンには苦労したと語っているように、美味しそうに見える料理の見せ方は難しい。作中では鍋物からカレー、カップラーメンに至るまでキャンプ飯の定番料理が数多く登場するが、本作ではキャラクターの豊かな表情を介してその美味しさが伝わってくる。普段感情をなかなか表出しないリンすらも、食事シーンでは溢れんばかりの幸せな表情で描かれ、料理描写の魅力を引き出している。原作では伝わりにくい料理描写をアニメという立体的な世界観を通して見事に描ききっているのは、京極監督の手腕に依るところが大きいだろう。

 さて、現在放送されているドラマ版は現在第2話まで放送されているが(1月19日時点)、アニメと比較してもその再現度は高く、原作に忠実なものとなっていた。具体的には、リンの火起こしパートの手順や台詞の言い回し、キャンプの設営部分を省かずに再現されていた。さらに、第1話の見どころであるリンとなでしこが月夜に佇む富士山に見惚れるシーンは、実写だからこそ味わい深いものがあった。

 また、第2話まで見て印象的だったのが、福原遥(リン役)と大原優乃(なでしこ役)がアニメ版に限りなく寄せつつも、違和感のない演技へと昇華していたことだ。2人のキャラクターはそれぞれ話し方や性格ともに個性的だが、声のトーンや話の間を原作のままに再現していたのは驚いた。同じ原作を持つアニメとドラマではあまりに実態が乖離してしまい、賛否両論が起こることも少なくない。その意味で本作は「原作に忠実」なドラマとなっており、SNSを見る限りでは好印象を抱いているファンが多い。

 『へやキャン△』にドラマと再び注目されつつある『ゆるキャン△』。すでに2期の制作と映画公開が決定しており、まだまだこの勢いは続いていきそうだ。

■川崎龍也
音楽を中心に幅広く執筆しているフリーライター。YouTubeを観ることが日課です。Twitter:@ryuya_s04

■放送情報
木ドラ25『ゆるキャン△』
テレビ東京系にて、毎週木曜深夜1:00〜1:30放送
BSテレ東にて、毎週火曜深夜0:00〜0:30放送
Amazon Prime Videoにて、各話地上波放送翌日毎週金曜10:00〜配信
出演:福原遥、大原優乃、田辺桃子、箭内夢菜、志田彩良、柳ゆり菜、土村芳
原作:『ゆるキャン△』あfろ(芳文社)
脚本:北川亜矢子
監督:二宮崇、吉野主、玉澤恭平
音楽:小田切大
主題歌:LONGMAN「Replay」(ソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズ)
プロデューサー:藤野慎也(テレビ東京)、熊谷喜一(ヘッドクォーター)、岩倉達哉(SDP)
制作:テレビ東京/SDP/ヘッドクォーター
製作著作:ドラマ「ゆるキャン△」製作委員会
(c)ドラマ「ゆるキャン△」製作委員会 (c)あfろ/芳文社
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/yurucamp/
公式Twitter:@yurucamp_drama
公式Instagram:@yurucamp_drama

関連記事