マイケル・キートン登場、スパイダーマンが“人殺し”……? 『モービウス』予告編の謎が意味すること

1.街の壁に描かれたスパイダーマンの絵の上にMURDERER(人殺し)と落書きされている
2.予告編の最後にマイケル・キートンが登場する

 なぜ、この2つの要素が物議をかもしたのか?

 スパイダーマンがMURDERER(人殺し)と非難されるとしたら、それは昨夏公開された『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』のラストにつながるものです。またマイケル・キートンは『スパイダーマン:ホーム・カミング』のヴィラン、ヴァルチャーを演じていました。そして『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』と『スパイダーマン:ホーム・カミング』は、トム・ホランド版スパイダーマンですから、両方ともMCUの中のお話なのです。そう! こうしたことから、ひょっとして『モービウス』はMCUの1つとして作られるのでは? とファンは騒いだわけです。

『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(c)2019 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved. | MARVEL and all related character names: (c) & TM 2019 MARVEL

 ここで「なーんだ、『モービウス』はMCUの1つなんだ」と考えればすっきりするのですが、そう簡単にはいきません(笑)。

 まず『モービウス』がMCUだとすると、明らかにMCUとは別路線をいっている「ヴェノム」との関係は? 『ヴェノム』はこの秋続編が封切られます。多くのファンは『モービウス』と『ヴェノム』がつながって“MCUとはリンクしない、ソニー版マーベル・ユニバース”が作られると思っていたのですから。また街の壁に描かれたスパイダーマンの姿は、いまのトム・ホランド版ではなくトビー・マグワイヤ版のスパイダーマンを思わせます。なぜ? というわけで、ツイッターのトレンド入りするぐらい、みな『モービウス』の話題でもちきりとなったのです。

『ヴェノム』(c)&TM 2018 MARVEL

 これはもう実際『モービウス』の映画を観るか、あるいはその前に『ヴェノム』続編の予告編をみることができるか、はたまたトム・ホランドくんが口をすべらせてくれるのを待つか、しかないのですが……以下、僕の推理というか妄想です。

 MCUのスパイダーマン世界とこの『モービウス』の世界はパラレル・ワールド(まさにスパイダーバース)の関係にあり、この『モービウス』の世界にもスパイダーマンがいてヴァルチャーがいる。なので『モービウス』の予告に出てきたヴァルチャーは、MCU版=「ファー・フロム・ホーム」のヴァルチャーの別次元版だが、顔形は同じなのでマイケル・キートンが演じている。

 僕が、こういうパラレル・ワールド説をとる理由は、MCUの「ファー・フロム・ホーム」にトビー版『スパイダーマン』の重要キャラだったデイリー・ビーグルのジェイムソンが登場。しかもトビー版と同様J.K.シモンズが演じていたことです。MCUとトビー版は同じ世界観ではないですから、このJ.K.シモンズ=ジェイムソンについてはパラレル・ワールドで解釈しないと成立しません。

『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(c)2019 Columbia Pictures Industries, Inc. All Rights Reserved. | MARVEL and all related character names: (c) & TM 2019 MARVEL

 つまりマイケル・キートンのヴァルチャーは、このJ.K.シモンズのジェイムソン的発想でキャスティングされているだと思います。そしてこの『モービウス』の世界の、トビー版の衣装の(?)スパイダーマンは何らかの事件のせいで、殺人の疑いをかけられている。したがって将来的に、トビー版の衣装を着たトム・ホランドが登場。そして『モービウス』の世界は『ヴェノム』とつながっているから、いつか、トビー版のコスチュームを着た“この世界の”トム・ホランドのスパイダーマンが、

トム・ハーディのヴェノム
ウッディ・ハレルソンのカーネイジ(『ヴェノム2』に登場との噂)
ジャレッド・レトのモービウス
マイケル・キートンの“この世界の”ヴァルチャー

 と三つ巴じゃなく五つ巴のバトルを繰り広げる! どうでしょうか? ワクワクしませんか?

 くりかえしになりますが、『モービウス』の予告編はとてもクールで、こんなややこしいことにとらわれる必要はないのですが、こういう風にあーだ、こーだと考えるのもまた楽しいですよね。個人的には、ジャレッド・レトがコウモリに囲まれるシーンがツボでした。彼は『スーサイド・スクワッド』でバットマンと戦うジョーカーを演じていました。その彼が、今度はコウモリ側のキャラ。不思議な縁を感じますね。

■杉山すぴ豊(すぎやま すぴ ゆたか)
アメキャラ系ライターの肩書でアメコミ映画に関するコラム等を『スクリーン』誌、『DVD&動画配信でーた』誌、劇場パンフレット等で担当。サンディエゴ・コミコンにも毎夏参加。現地から日本のニュース・サイトへのレポートも手掛ける。東京コミコンにてスタン・リーが登壇したスパイダーマンのステージのMCもつとめた。エマ・ストーンに「あなた日本のスパイダーマンね」と言われたことが自慢。現在発売中の「アメコミ・フロント・ライン」の執筆にも参加。Twitter

■公開情報
『モービウス』
2020年全国ロードショー
監督:ダニエル・エスピノーサ
出演:ジャレッド・レト、マット・スミス、アドリア・アルホナ、ジャレッド・ハリス、マイケル・キートン
配給:ソニー・ピクチャーズ
(c)&TM 2020 MARVEL
公式サイト:https://www.morbius-movie.jp
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