野沢雅子、『ドラゴンボール』孫悟空と歩んだ30年 「世界中の人に元気を届け続ける」

 日本だけでなく世界中で人気を集め続けている『ドラゴンボール』。鳥山明が1984年に週刊少年ジャンプで連載をはじめ、1986年にTVアニメ化もされた本作は、映画、ゲームなど今日に至るまでさまざまメディアミックスを展開させ、30年以上にわたり人々の心を掴み続けている。

 そんな『ドラゴンボール』の象徴的存在が、主人公・孫悟空の声優を務める野沢雅子だ。2018年公開の映画『ドラゴンボール超 ブロリー』でも、悟空、バーダック(悟空の父)、悟天(悟空の次男)の3役を担い、力強い声で物語を牽引した。

 東映チャンネルにて1月10日より放送される、強敵“ブロリー”が登場する劇場版の特集放送「劇場版 ドラゴンボール ブロリースペシャル」を記念して、野沢に『ドラゴンボール』、孫悟空への思い、声優を続ける秘訣など、じっくりと話を聞いた。

 悟空と一心同体

ーー『ドラゴンボール』のTVアニメの放送が始まったのが1986年です。約30年の月日が経ちましたが、振り返ってみていかがでしょうか。

野沢雅子(以下、野沢):悟空とも30年以上の付き合いなんですよね。ただ、頑張って30年間続けてきたというよりは、振り返ってみたら30年経っていたという感覚なんです。だから、最初のオファーを受けたのがつい先日のような気持ちもあります。悟空と共に生きてきた30年間でした。

ーーどんな経緯で悟空を演じることになったのでしょうか。

野沢:鳥山明先生が原作のアニメ『Dr.スランプ アラレちゃん』(1981年~1986年/フジテレビ系)を観たとき、「なんて面白い作品なんだろう!」と感じたのを覚えています。私もいつか鳥山先生の作品に出てみたいなと思っていた矢先に『ドラゴンボール』のオーディションへの参加オファーがあったんです。役のオファーではなく、オーディションを経ての合格だったので、より一層嬉しかったのを覚えています。その後聞いた話なのですが、当時私を選んで下さったのは鳥山先生ご本人だったそうなんです。プロデューサー陣は他の候補者も推していたみたいなのですが、鳥山先生が「野沢さんしかいない」とはっきり言ってくれたみたいで(笑)。

『ドラゴンボール超 ブロリー』

ーーオーディションだったとは驚きです。野沢さんが感じる悟空の魅力はどんなところでしょうか。

野沢:悟空は大人になっても子供の頃と変わらないんですよね。絶対に上辺だけで人を判断しませんし、差別しない。常識はずれなところもありますけど、子供のままの心を持った本当にピュアな人です。悟空はたくさんの敵と戦ってきましたが、どの相手のことも“悪”だとは思っていないんですよね。だから、悟空みたいな人がたくさん世の中にいたらいいのにと思っています。現実社会の私たちは子供の頃は悟空と同じ気持ちでも、大人になって現実を知れば知るほど純粋なままではいられなくなってしまいますから。

ーーそんな悟空を演じる上でどんなことを心がけてきたのでしょうか。

野沢:悟空のお芝居で苦労することはありません。こうしうよう、ああしようといった組み立てはまったくなく、“悟空そのもの”になってしまうので。「苦労がないのが苦労かな」というぐらいです(笑)。

『ドラゴンボール超 ブロリー』

ーーまさに悟空と一心同体状態なんですね。

野沢:私が根本的に悟空と似ている性格なんです。歳を重ねると「何歳になった?」という話がよく出てくるのですが、どうしてみんな相手の年齢を気にするんだろうと思います。何歳になっても人は人。自分が何歳でもいいし、相手が何歳でもいい。人と人として向き合えばいいんです。もちろん、人間関係を円滑にするために考えるべきことはありますし、絶対に守らないといけないことはあります。でも、考えすぎて「こうしなければいけない」と思い込んで、自分を偽って生きていくのは違う気がするんです。悟空もいい意味で相手のことを考えずに誰にでもフラットに接していますよね。私もそのスタンスは一緒。悟空は気にしなすぎるところがありますけど、世の中の人ももっとシンプルに生きてもいいと思います。

ーー収録にはどんな形でのぞんでいるんですか。

野沢:テレビ放送中のときなどは、先々まで原作コミックを送っていただくのですが、私は絶対に先を読まないんです。内容を知ってしまったらこれから起きることが分かってしまう。私は悟空と一緒に初めての経験をしたいんです。それは1986年の放送がスタートしたときから、テレビでも劇場版でもずっと続けているところですね。

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