『スカーレット』における“料理”の役割とは? 細部までこだわり抜かれた生活のリアル

料理の視点から観る『スカーレット』

――川原家の料理はどんなところを意識されているのでしょうか。

広里:喜美子が幼少期の頃、庭にいろんな作物を植えて畑を作りました。川原家の料理はその畑で収穫したであろう食材を使うようにしています。大根は抜いたあとに菜の花ができてくるので、どっちも使ってみようとか。『スカーレット』全体のテーマでもあると思いますが、喜美子は学び工夫し、考えてさまざまなことに挑戦していきます。料理においても、あるものをいかにうまく使うか、というのを大事にしています。三姉妹が縁側でスイカを食べるシーンがありましたが、実はその後の夕食でスイカの皮を使った漬物を出しているんです。戸田さんは喜美子を演じるヒントをそういった料理からも受け取って演技に生かしてくださるんです。本当にすごいなと感じます。

――スイカの漬物があったなんてびっくりしました。お話を聞いていると、広里さんが演出に与えている影響も非常に大きなものだと感じます。

広里:うれしいことに色んな意見を汲んでもらっています。川原家では常治(北村一輝)が度々ちゃぶ台返しを行ってきましたが、あそこでこぼれた味噌汁の具をマツさんはどうするんだろう、というのもマツを演じる富田さんと相談しました。ふきんに包んで捨ててしまう? いや、マツさんなら洗って鍋に入れるだろう、きんぴらとして炒め直すだろうとか。富田さんはそういったディテールをすごく気にしてくださるので、細かいところまでお話させていただいています。

――喜美子は結婚をして、子供も産まれ、陶芸家として新たな道程を歩もうとしています。今後の『スカーレット』を料理の視点から観るとどんなポイントがあるでしょうか。

広里:今後は「陶芸家・川原喜美子」としての歩みが描かれていきます。喜美子が作る料理にも、陶芸家としての発想や色使いなどが、さり気なく散りばめられていきます。喜美子の工夫や手先の器用さを、料理からも感じ取ってもらえたらうれしいですね。また、今後の『スカーレット』では大阪万博の時代がやってきます。喫茶店のシーンをひとつとってもそれまでコーヒーだけの店から、パンケーキなどの軽食を少し取り入れます。日本の洋食の特徴が万博を機に変わります。川原家に大きな影響が出るわけではないのですが、さりげない時代の変化にも注目してもらえたらと思います。

(取材・文=石井達也)

■放送情報
NHK連続テレビ小説『スカーレット』
NHK総合にて、2019年9月30日(月)〜2020年3月放送予定
出演:戸田恵梨香、北村一輝、富田靖子、桜庭ななみ、福田麻由子、大島優子、林遣都、財前直見、マギー、西川貴教、松下洸平ほか
脚本:水橋文美江
制作統括:内田ゆき
プロデューサー:長谷知記、葛西勇也
演出:中島由貴、佐藤譲、鈴木航ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/scarlet/

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