『グランメゾン東京』“大人の夢”はまだ終わらない? 最後まで主役を立てた木村拓哉の見事な演技

 挫折した料理人たちが夢を追う『グランメゾン東京』について、放送回ごとに俳優・木村拓哉への期待と影響の大きさを感じた。様々な職業を演じてきた木村に対して、放送前には今作もこれまでの作風を踏襲した作品であると思われていた。その予想を鮮やかに裏切った要因は、鈴木京香や沢村一樹、及川光博たち同世代の俳優陣とのケミストリーやシンプルかつ効果的な演出、視覚で楽しむことのできる料理の質の高さだった。一週間のはじまりを前にとてもぜいたくな時間を過ごした実感がある。

 木村に対しても、様々な評価がある中で、あらためて嘘のない演技をする人であると感じた。ドラマは虚構の世界だが、とことんキャラクターを理解し、技術を身につけて臨む木村の姿勢は一貫している。そして、ここ一番での集中力あるいは視聴者を引き込む力に関しては、別格といえる存在感を放つ。俳優・木村拓哉が成熟と向き合うことで新たな可能性を示した『グランメゾン東京』だが、「ヒーローは静かに去る」という王道を踏襲しながらも、ほどよく力の抜けた“背負いすぎない”空気が心地良かった。

 ある程度社会の中で浮き沈みを経験してきた人なら、自分の目の前で辞めていく人や去っていった仲間の背中を目にしていることだろう。挫折を経験して、夢を追うことが決して簡単ではないことも理解している。だからこそ、逆に言えばその価値もわかるのだと思う。『グランメゾン東京』が描いたのは、若さをただ反復するのではない、成熟し、年を重ねてこそ追うことのできる夢の形だった。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログtwitter

■放送情報
日曜劇場『グランメゾン東京』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54
出演:木村拓哉、鈴木京香、玉森裕太(Kis-My-Ft2)、尾上菊之助、及川光博、 沢村一樹
脚本:黒岩勉
プロデュース:伊與田英徳、東仲恵吾
演出:塚原あゆ子ほか
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/grandmaisontokyo/

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