【ネタバレあり】『スター・ウォーズ』続3部作とは何だったのか 小野寺系が“失敗の理由”を解説
2015年から、スピンオフを間にはさみながら、2年ごとのペースで製作・公開されてきた、『スター・ウォーズ』エピソード7、8、9。すなわち「続三部作(シークエル・トリロジー)」は、この度公開された9作目『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』で完結を迎えた。同時にそれは、シリーズの創造者ジョージ・ルーカスが構想していた、9本で構成される壮大なサーガ……宇宙のはるか彼方の銀河で起こる戦いの歴史と、スカイウォーカー一族の運命を描いた神話のような伝説を記す“カノン(正典)”といえる物語が、これで完成したということになる。
とはいえ、1~6までのシリーズの中心的存在だったルーカスは、自身が保有していた作品の権利を製作会社ごとディズニーに譲り、新しい構想を提案するもディズニー側に却下されているので、この「続3部作」は、ほぼルーカスの手から離れたシリーズだということを留意する必要がある。
この買収劇によって、“続3部作”は、ウォルト・ディズニー・カンパニー会長ロバート・アイガーCEO、ウォルト・ディズニー・スタジオのアラン・ホルン会長ら、ディズニー上層部に委ねられることになった。そして、その下にルーカスフィルム代表キャスリーン・ケネディ、さらにJ・J・エイブラムス監督、ライアン・ジョンソン監督にくわえ、ローレンス・カスダン、マイケル・アーント、クリス・テリオなどの脚本家たちが力を出し合って、その骨格が作られている。
公開に合わせて、「エピソード7」、「エピソード8」と評論してきた私自身も、この「続3部作」とは数年間の付き合いとなった。本トリロジーが完結するまでは、「続3部作」それぞれのエピソードの最終的な結論を出すのは保留していたところがあった。だが、いまや全貌がついに明らかになったことで、その評価をためらわずに表明できる。ここでは、今回の『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』への評価はもちろん、スピンオフを除く『スター・ウォーズ』シリーズ全てを俯瞰しながら、「続3部作」は何だったのかを率直に語っていきたい。
「続3部作」は失敗だった
結論から先に言ってしまうと、残念ながら今回の続3部作という試み、それぞれが『スター・ウォーズ』のシリーズとして、「失敗」と判断するほかない、散々な出来としかいえないものになったと感じている。ちなみに、もともと『スター・ウォーズ』のファンである私は、エピソード1~6全てを高く評価し、どの作品も折を見て繰り返し鑑賞している。
もともと、ディズニーによるルーカスフィルム買収と、『スター・ウォーズ』シリーズの続編製作決定の報を聞いたときから、“いやな予感”がしていた。2019年に新たにオープンした、シリーズを題材としたディズニーの新たなテーマワールド「スター・ウォーズ:ギャラクシーズ・エッジ」建設との連動をあわせて考えると、結局のところ娯楽施設やグッズによる莫大な収益こそが目当てで、映画はビジネスを盛り上げる起爆剤としての役割を果たすための“コンテンツ”のひとつに成り下がるのではないか、そしてディズニー・リゾートのアトラクション「スター・ツアーズ」のような内容の作品を劇場でかける気なのではないかという不安があったのだ。
果たして、この懸念は的中も的中、“大的中”していた。『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(エピソード7)は、まさに「スター・ツアーズ」を彷彿とさせる、旧3部作を追体験するような郷愁漂う映画になっていたのだ。この作品で唯一、新しかったのは、主人公が女性となるなど、キャストに多様性をとり入れたことくらいであろう。
事態を複雑にしたのは、一部のファンが、この内容を支持してしまったことだった。これらファンたちは、ルーカスが監督した新3部作の内容に不満を持っていて、作品のテイストを旧3部作のようなものに戻してほしいと願っていたのだ。