松下洸平、本田大輔、北村一輝 『スカーレット』に登場する三者三様の“理想の夫”

『スカーレット』“理想の夫”は?

 『スカーレット』(NHK総合)のヒロイン喜美子(戸田恵梨香)は、幼い頃から一家を支える働き者の長女としての役割を果たしながらも、興味のあることや好きな人に対してはその情熱を抑えることなく突き進んできた。そのまっすぐな愛情表現は、真面目で素朴な八郎(松下洸平)が身悶えするほど可愛らしく、ときにかなり大胆だ。

 そんな喜美子に対して、「僕はつきおうてもない人のことを、気軽に名前では呼べません」「結婚前や、男の一人暮らしの部屋に上げるなんてあかん」と、冷静に振る舞おうとしつつ、肝心な場面では彼女の気持ちを受け入れる八郎の好感度は急上昇。12月18日の放送の第69話では、15分間の登場人物が喜美子と八郎だけという、朝ドラ史上稀に見るキス直前シーンとなった。とくに、八郎の「キスはいつするんやろ」「僕も男やで」のセリフは多くの反響を呼び、八郎の魅力を存分に伝える名場面として強烈な印象を残した。

 また、家族に見せる顔、仕事に打ち込むときの顔、それぞれあるように、喜美子が八郎にだけ見せる表情の変化も多くの女性の共感を読んでいる。陶芸家として新たな挑戦をすることになったのも八郎との出会いがあったからこそ。彼女にとって八郎はまさに“理想の夫”といえるだろう。

 喜美子の母、マツ(富田靖子)は一目見て八郎の誠実な人柄を見抜き、喜美子から何の相談も受けていないのに、娘の気持ちに気づいた。初対面ですでに喜美子の幸せを願う母の勘が働いたのだろう。三人姉妹のしっかり者の長女である喜美子と、八人兄弟の末っ子の八郎。夢を共有し合える2人は、喜美子の父、常治(北村一輝)以外の誰もが認める相性の良い似合いのカップルだ。

 昭和のダメ父であり、ダメ夫である常治が結婚を反対されたときに駆け落ちしたのとは対照的に、八郎は喜美子に対して「一緒に頭下げよ、結婚しよな?」と諦めることなく、時間をかけてでも説得できるよう川原家を訪れた。計画性のない常治とは対照的に、ただ夢を見るだけでなく行動が伴うところも信頼できる。

 また、父の常治は喜美子だけでなく三人姉妹それぞれに対して「女に学問は必要ない」と言う。自分が不幸な生い立ちで勉強する余裕がなかったから娘たちが学ぶことを認めず、夢に向かって努力する八郎にも夢を叶える必要はないと否定する。喜美子の結婚に関しても、父親にとって都合のよい相手と見合いさせて婿養子にすれば安泰くらいにしか考えていなかったが、いざ喜美子が結婚したいという相手を連れてくると拒否(その後、喜美子の幸せを願う姿も描かれたが)。「今この家で手がかかるのはお父ちゃんだけやし」と、マツは鷹揚に構えていたが、目の前にある問題を解決しようとしない夫婦の火の粉をかぶるのは喜美子の役目になってしまう。

“理想の夫”だった敏春も子供の誕生によって変化が?

 喜美子の親友、照子(大島優子)が八郎に対して、(貧乏な)一家を子供の頃から背負ってきた喜美子のことを「自由にしてあげて」と伝えたように、背負うものは全く違うが「家」を第一に考えなければならなかった長女としての役割を軽くしてくれる相手こそ、彼女たちにとっては必要な存在だったといえる。そう考えると、マツにとっても今は縁を切った大阪の実家から自由にしてくれた相手、常治こそ理想の夫ということになるのかもしれない。

 喜美子が八郎と出会ったことで新たな挑戦に踏み出せたように、家業を継ぐ婿養子との結婚が決められていた照子の負担を軽くし、逆にこの人を支えたいとまで思わせた敏春(本田大輔)の存在も貴重で、照子にとっての最高のパートナーといえるだろう。

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