『シャーロック』ディーン・フジオカ×岩田剛典の“最後の晩餐” 次週は獅子雄1人の戦いに?

 いまだその存在が謎に包まれている宿敵・守谷へと近付く手掛かりとなるはずだった安蘭世津子(長谷川京子)が目の前で命を落としたことで、獅子雄(ディーン・フジオカ)は意気消沈。そんな“相棒”を元気付けようと、若宮(岩田剛典)は獅子雄を有名イタリアレストランに誘い出す。12月2日に放送された『シャーロック』第9話は、ドラマのクライマックスに向けてワンクッションを置くエピソードとしての役割を果たすと同時に獅子雄と若宮の関係の深さをしっかりと表現した、まさに“最後の晩餐”と呼べる王道の密室ミステリーになったのではないだろうか。

 木暮(山田真歩)の誕生日を祝うという口実で誘い出された獅子雄は、若宮と江藤(佐々木蔵之介)とともに、店の違和感を推理しはじめる。看板料理であるはずの鶉のカチャトーラが提供できないこと、料理の味が1ヶ月前と突然変わったということ、5人いるはずの厨房に4人しかおらず、パティシエが皮剥きをやっていたことなど。そんな中、獅子雄は店の常連だという不破凛子(島かおり)が失くしたイヤリングを探す手助けをする。そして店の倉庫で男性の死体を発見。しかし、少し経ってから江藤が確認に行くと、すでに死体は消えていたのだ……。

 不破凛子という老婦人の名前と、彼女が失くしたというオパールのイヤリングというアイテムから、今回のモチーフとなった“語られざる事件”は『シャーロック・ホームズの冒険』に収録されている『まだらの紐』で語られるファリントッシュ夫人の「オパールの頭飾りに関する事件」ということがわかる。また『まだらの紐』に登場する人物名、ヘレン・ストーナーはレストランの店名「エレナ」に、ロイロット博士は何やらレストランの口コミサイトの名前として引用されているわけだ。それでも劇中で起きる事件は、様々な登場人物たちの思惑が交錯し合う、アーサー・コナン・ドイルというよりも、どちらかといえばアガサ・クリスティ寄りのミステリーであったように思える。

 病気によって味覚が鈍ったシェフと、そのシェフによって救われたソムリエ。借金によって首が回らなくなり“最後の晩餐”のために思い出の店を訪れたという老夫婦。そうした登場人物たちの中で、少なからず獅子雄と若宮の物語にも何か大きな変化があらわれはじめていると見える。自分から時間潰しに推理ゲームを提案する若宮に、レストランに誘ってもらったことで若宮に珍しく(おそらく初めてではなかろうか)素直に御礼を告げる獅子雄。期せずして“バディ”となってぶつかり合いながらも、信頼関係を築き上げてきた2人。その結束が高まると同時にすぐさま2人の“別れ”が迫っていることが匂わされてきたわけだが、今回はそこに“最後の晩餐”という言葉が重なることで、よりそのニュアンスが強くなっていたといえよう。

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