『スカーレット』1日の始まりを後押しする戸田恵梨香の笑顔 フカ先生、ちや子の名言を振り返る
『スカーレット』(NHK総合)第7週「弟子にしてください!」では、喜美子(戸田恵梨香)が深野心仙(イッセー尾形)と出会い、弟子入りするまでが描かれる。
“フカ先生”こと深野は、信楽焼の火鉢の絵付け師。日本画家の権高い先生だが、初登場はくしゃみ連発、適当な「ええよぉ」が口癖のどこか頼りない人物だった。丸熊陶業で社員食堂のお手伝いとして働く喜美子は、仕事が終わった後に、絵付けも教わっていくつもりでいたが、一人前になるには数年の修行が必要であることを聞き、自分の考えの甘さに気づく。未練を捨て去ろうと諦めかけた絵付けの道だったが、再び喜美子を火鉢の前に向かわせたのは、深野が絵付けに取り組む姿だった。
弟子たちから、「先生が集中している時は見たらあかん」と言われていた、深野の絵付けする様子。喜美子は、うなり声を上げて絵付けする深野の表情をそっと覗き込む。そこには、笑いながら絵付けをする深野がいた。深野は喜美子に、従軍画家として戦争画を描いていたこと、大好きな絵がもう一生描けないと思っていたが、絵付けされた火鉢に出会い、再び楽しく、嬉しく絵を描く感覚を取り戻したこと。「笑いながら絵ぇ描けることが、どれだけ幸せなことか」「火鉢の前であったまる人のことを思うとどれだけ幸せなことか」というセリフは、深野の深い愛情と創作への強い思いが溢れている。そんな深野の人生を知り、喜美子は絵付け師になりたいのではなく、嬉しそうに笑いながら楽しそうにやっているフカ先生の弟子になりたい、と思うようになるのだ。
3年間、荒木荘で女中として働いていた喜美子は根性なしではない。常治(北村一輝)の不器用な愛情を受け、喜美子は9番目の弟子“キュウちゃん”として、本格的に絵付けを学び始める。喜美子の修行は、一本の線を繰り返し、繰り返し描くことからスタート。何万本も新聞紙に描き、時には深野の絵付けの模様を模写することも。
不安でしかなかった深野の「ええよぉ」も、彼の絵に対する直向きな姿勢を知ると、不思議と耳馴染みが良く聞こえてくる。そんな深野は、日々線を描き続ける喜美子にある言葉をかける。「はよ追いつきたい思てるやろうけど、近道はないねん。あってもな、近道はお勧めせえへん。なるべく時間をかけて歩く方が、力がつく。歩く力はな、大変な道の方がようつく。よう力つけとけ、今しかできひんことや」と、たまには気分転換にみかんの絵を描くような寄り道も大切だと提言をするのだ。
第7週には、ほかにも金言と思えるセリフが多くある。深野が喜美子に自身の生い立ちを話した後にかける「なんかやろ思った時に、お金がないことに気持ちが負けたらあかん」という言葉。さらに、雑誌記者として自分の本当にやりたかった道を見つけたちや子(水野美紀)が、喜美子らに嬉しそうに話す「必死に思いを伝えて、一生懸命掛け合うて、ようやっと任せてもらえることになった」「自分で時間も決めてじっくり丁寧に取り組める。やりたいことやらせてもらってる。楽しいてしゃあない」というセリフ。これらは深野とちや子が、かつて喜美子が夢見ていた“想像するだけで楽しくてワクワクする道”にたどり着いたからこそ、話せる格言。もちろん、喜美子に向けたセリフであるものの、仕事前に、家事をする前に、1日の始まりを後押ししてくれるような温かな気持ちになった視聴者も多くいたのではないだろうか。