今市隆二、異文化と触れ合うことで獲得した“俳優”としての顔 『CINEMA FIGHTERS』での新たな挑戦

「On The Way」

 実験的という意味で特に注目したいのは、冒頭で挙げた「On The Way」だろう。メキシコロケを敢行した同作は、RADWIMPSの野田洋次郎が俳優デビューを飾った映画『トイレのピエタ』などで知られる松永大司監督ならではの手法が光る一作だ。NPO活動をしている母の代理でメキシコへやってきた健太(今市隆二)が、アメリカを目指す隣国からの移民達のために食事や衣類を提供している移民センターを訪れるものの、命がけで国境を目指す人々の姿を目の当たりにして、無力感に苛まれるというストーリー。松永大司監督は、まるでドキュメンタリーのようなドライなタッチで、異国の文化に触れる今市隆二の表情をそのまま捉えることで、虚実のあわいを物語の中に閉じ込めた。健太と今市隆二の心情が自然と重なる瞬間が、この作品の見どころと言えるだろう。

 同作のために今市隆二が歌った新曲「Church by the sea」も印象的だ。今市自身が「この曲は、もともとはオルゴールの音色を基調とした、ファンタジックな楽曲だったんですけれど、いろいろと意見を言わせてもらって、生の弦やクワイヤも入れてもらい、かなり壮大な曲になりました」(参考:https://realsound.jp/2019/10/post-437496.html)と語る同曲は、「On The Way」のラストシーンで静かに流れ始める。健太として体験した無情な世界に対し、今市隆二が歌で祈りを捧げているかのようで、わずか25分程度の短い作品ながら、我々鑑賞者に深い余韻を残すのである。

RYUJI IMAICHI / Church by the sea(Music Video)

(文=松田広宣)

■公開情報
『その瞬間、僕は泣きたくなった-CINEMA FIGHTERS project-』
TOHOシネマズ 日本橋ほか全国公開中

「Beautiful」 
出演:AKIRA(EXILE)、蓮佛美沙子
監督:三池崇史
主題歌:「Beautiful」 Crystal Kay

「海風」
出演:小林直己、秋山菜津子
監督:行定勲
主題歌:「海風」 Leola

「On The Way」
出演:今市隆二、パコ・ニコラス
監督:松永大司 
主題歌:「Church by the sea」 RYUJI IMAICHI

「GHOSTING」 
出演:佐野玲於、畑芽育
監督:洞内広樹
主題歌:「ラストラブ」 LISA

「魔女に焦がれて」
出演:佐藤大樹、久保田紗友
監督:井上博貴
主題歌:「ライラック」琉衣

エグゼクティブプロデューサー:EXILE HIRO
企画・プロデュース:別所哲也
コンセプトプロデューサー:小竹正人
製作:LDH JAPAN   
制作:パシフィックボイス
配給:LDH PICTURES
(c)2019 CINEMA FIGHTERS project

関連記事