『なつぞら』脚本家・大森寿美男が明かす最終回に向けての構想 “開拓者精神”をどう描くのか

『なつぞら』朝ドラ王道パターンを貫く意義

 日本アニメーションの草創期を描く『なつぞら』。だが実際の史実を参考にしつつも、あくまでフィクションとして再構成している。

「舞台をどうしようかと考えたときに、なつが生きてきた十勝という場所が浮かびました。でも、単純に十勝を舞台に『アルプスの少女ハイジ』をやると、ドラマ前半の北海道編で描いたものと被ってしまいます。それで、『大草原の小さな家』の舞台を十勝に置き換えてアニメにしようと考えたんです」

 戦災孤児となった幼いなつは、亡き父の戦友である剛男(藤木直人)に連れられ、十勝の柴田家へやってくる。開拓者一世の泰樹(草刈正雄)をはじめとした人々の厳しさと愛に触れて成長していく。そんななつと、アルムおんじに預けられ、アルプスの大自然とそこで生きる動植物を通じて育っていくハイジはどこか共通項を感じさせる。

 また、『大草原の小さな家』は、アメリカの西部開拓時代を舞台にしたローラ・インガルス・ワイルダーの自伝的小説で、連続ドラマ化もされ人気を博した。『なつぞら』の作中では、坂場は「日本にもささやかな日常を一生懸命に生きている開拓者たちがいることを、その作品を通して描きたいんだ」と語る。北海道の開拓者の家族の生き方に共鳴する坂場が描く『大草原の少女ソラ』は、なつが生きてきた世界を描きつつも、坂場なりの目線が込められているのだろう。

 また、『なつぞら』第1話からアニメーションがふんだんに挿入され、タイトルバックが全編アニメーションで作られたことも話題となった。アニメーションを手がけるチームからの後押しもあったと大森は明かす。

「アニメパートを作ってくださっている舘野仁美さんや刈谷仁美さんたちの意見も参考にしました。タイトルバックの絵を描いてくださった方たちは、実際に十勝に取材に行ってくださっていて、その方々が十勝の風景を題材に物語を描きたいと言ってくれたんです」

 タイトルバックでは、赤いワンピースをきた女の子が動物とともに草原を駆け回る姿、そしてそれをアニメーターとして描き出すなつの姿が描かれる。半年をかけ放送され、スピッツの主題歌とともに視聴者にはお馴染みとなった光景こそが、天陽(吉沢亮)が雪月の包装紙に描いた“開拓者精神”であり、その思いを受け取ったなつと、マコプロダクションのアニメーターたち、そして北海道に生きる開拓者たちが描く希望であったのかもしれない。

(取材・文=安田周平)

■放送情報
連続テレビ小説『なつぞら』
4月1日(月)~全156回
作:大森寿美男
語り:内村光良
出演:広瀬すず、松嶋菜々子、藤木直人/岡田将生、吉沢亮、清原翔/安田顕、音尾琢真/小林綾子、高畑淳子、草刈正雄ほか
制作統括:磯智明、福岡利武
演出:木村隆文、田中正、渡辺哲也、田中健二ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/natsuzora/

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