多部未華子が本当に輝くのは30代から? 『これは経費で落ちません!』の“森若さん”が大評判

 思えば『山田太郎ものがたり』(TBS系)で、玉の輿を狙う妄想女子高生をコミカルに演じていたのは、もう10年以上前の2007年。三白眼で堂々としていて、表情豊かで、当時からすでにうまかったのは強く印象に残っている。

 さらに『鹿男あをによし』(08年、フジテレビ系)では、ミステリアスな女子高生を演じた。明らかにただ者ではない、神秘的な雰囲気を放つ当時19歳の彼女の存在感は、摩訶不思議な万城目学ワールドに説得力を与えていた。

 その後、NHKの朝ドラ『つばさ』で“20歳のおかん”を堂々たる演技で好演。『デカワンコ』(日本テレビ系)の天然キャラのコスプレ刑事が注目されたり、近年は『先に生まれただけの僕』(日本テレビ系)の時もヒロイン役で話題になったり、淡麗ジュークボックスのCMでも強い印象を残している。

 ちなみに、10代の頃から「個性派・演技派」として評価されてきた彼女の真の実力を見せつけられた気がしたのは、2017年に上演された舞台『オーランドー』だった。

 これは英国女流作家ヴァージニア・ウルフの代表作を劇作家サラ・ルールが翻訳した作品で、白井晃の演出により、多部未華子と小日向文世、戸次重幸、池田鉄洋、野間口徹、小芝風花の6名が20役以上を演じたもの。

 多部は、16世紀から20世紀にまたがる時を超え、女性たちを魅了した美貌の青年貴族に挑んだが、想像を絶するような膨大なセリフ量を滑舌よくスピーディに繰り出す様は圧巻で、その心地よい声に聴き入るうちに、観客側も時を超えていくような不思議な快感を覚えることができた。

 「本当は舞台のほうが実力を発揮できるんじゃないか」と思うほどだったが、そんな彼女がテレビドラマに主演として戻ってきたのは、ずいぶん得をした気分にもなる。

 現在30歳にして、少年のような凛々しさや少女のような愛らしさを持ちつつ、コメディエンヌとしての才覚にも磨きをかけている多部未華子。彼女が存分に本当の輝きを見せるのは、30代からかもしれない。

■田幸和歌子
出版社、広告制作会社を経てフリーランスのライターに。主な著書に『KinKiKids おわりなき道』『Hey!Say!JUMP 9つのトビラが開くとき』(ともにアールズ出版)、『大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた』(太田出版)などがある。

■放送情報
ドラマ10『これは経費で落ちません!』
NHK総合にて、毎週金曜22:00〜22:49放送(連続10回)
出演:多部未華子、重岡大毅(ジャニーズWEST)、伊藤沙莉、桐山漣、松井愛莉、韓英恵
角田晃広、片瀬那奈、モロ師岡、平山浩行、吹越満ほか
原作:青木祐子
脚本:渡辺千穂、藤平久子、蛭田直美
音楽:安田寿之
主題歌:阿部真央
制作統括:管原浩(NHK)、坂下哲也(AX-ON)
演出:中島悟、松永洋一
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/drama/drama10/keihi/

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