中川大志が明かす、『なつぞら』イッキュウさんから受けた刺激 「熱量だけは失っちゃいけない」

中川大志が明かす、坂場役から受けた刺激

ーーなつへの恋心の表し方は朝ドラでは珍しいですよね。

中川:ものづくりをする中で、坂場はなつの才能にまず惚れて、「この人と一緒に作品を作っていきたい」と思っただろうし、常に他のアニメーターたちとの間に立ってくれたのもなつで、坂場の欠落している部分を補ってくれたので、ずっと同じ方向を向いて隣に並び続けていた人なのかなと。坂場の中ではこの人と一緒にいたいという思いがあったんだけど、それを作品作りから切り離して考えられないキャラクターなんです。だから、最初のプロポーズも変なタイミングですよね。

ーーなるほど。

中川:でも喫茶店のシーンは一番大きかったですね。自分の感情に向き合えていなかっただけで、アニメーションという坂場にとっての全てだったものを失ってでもこの人と一緒にいたいとようやく気付いたのが喫茶店のシーンでした。だからこそ、その後風車でもう一回プロポーズするシーンは、頭ではなく心に湧き出てくる言葉で話さなければならないと思ったし、脱皮できた瞬間にしないといけないなと。広瀬さんとも、くっつきそうでくっつかないというのを何週にも渡って続いていたので、タイミングごとに話し合って整理しながらやっていました。

ーー広瀬さんの座長としての印象はいかがです?

中川:すごく自然体ですね。気負っていないというか、「この人は緊張する瞬間あるのかな」と思うくらい器が大きいです。僕は『なつぞら』に入った時も1カ月くらい緊張していて割と常にビビっていたので(笑)。キャストやスタッフさんの入れ替わりもある中でも、自然体でどしっと構えてブレない方で、一丸となってやってこれたのは、座長の力だと思います。疲れているところを見ないですし、エネルギッシュというか体力がすごすぎで、僕らよりもはるかに現場にいる人なので、「なっちゃんの前で寝たりできない……」みたいな(笑)。同い年なんですが、それくらい強い座長で尊敬しています。

ーーものづくりに真摯な坂場を演じたことで、ご自身に影響はありましたか。

中川:ものづくりに対するお話なので、刺激を受けたセリフがたくさんありました。役者としてものづくりをする上で、「ここまでやったからオーケー」という仕事ではない、答えがないからこそ終わりもないんです。僕がその通りだなと思ったのが、「子どもはどこまでだって見てるよ」というセリフです。見る人の力をなめてはいけない、何かを作って届ける側の人間として真剣勝負で向き合っていかなくはならないし、その時の環境の中で予算と期日を守りながらも、その熱量だけは失っちゃいけないなと。

ーー坂場の役作りにもこだわりがあったんですね。

中川:坂場は今までやってきた役の中で、軌道に乗るまでに一番時間がかかりました。坂場を知っていくにつれて、このキャラクターを伝えるにはいろんなやり方があると思ったんです。だからこそどういう風にお客さんに伝えれば、最悪の第一印象を覆していけるのか。そこは正直色々迷ったし、探ったし、時間がかかりました。でも、東洋動画のスタッフはじめいろんな人たちと関わることで、もともと持っているものがだんだんと見えてくるキャラクターだと思ったので、朝ドラの長いスパンを使って、人物の印象を変えていけるのはやりがいのあるキャラクターだなと思っています。

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