『火口のふたり』柄本佑×瀧内公美が語る、荒井晴彦への挑戦 「“身体の言い分”に正直に生きること」

『火口のふたり』柄本佑×瀧内公美が語る

 本能のままに生きることは“とっても気持ちいい”

ーー直子は、「今夜だけ、あの頃に戻ってみない?」というセリフが象徴的なように自ら仕掛けにいく女性です。結婚を前に昔の恋人を誘ってしまう直子に共感するところはありましたか。

瀧内:本能のままに生きることが作品のテーマでもあるので、「この人といたい」っていう気持ちを大事にすることはすごく素敵だなと思いました。そして直子に巻き込まれていきながらもそのまま寄り添ってくれる賢治も素敵だなと。口には出せない女性の「私の気持ちわかってよ!」を全部わかってくれた話でもあるのかなと感じます。

柄本:セックスして、ご飯食べて、たくさん寝る。欲求に馬鹿正直に生きている2人の映画なんです。なのに、フィクション度が異常に強い作品になっている。それは今の時代に本能に忠実な人なんてなかなかいないということでもあり、人間の三大欲求のままに生きることが難しいということの表れなのかなと思います。

ーー非常にハードな話ではありますが、どこか作品全体を通しての爽やかさと優しさを感じました。本能のままに生きる賢治と直子を、どのように捉えていますか。

柄本:勢いのまま結婚して、離婚して、どうにもならなくなって首を吊ろうとしたら失敗。そしたらうつ病にもなって、プー太郎になってしまう賢治。彼はとにかく自分を雑に扱ってきた人生だったんです。そんな彼が“世界が終わってしまう”こと自体に直面したとき、初めて自分の身体の言い分に正直に生きようとする。賢治は一見どうしようもなくて自分勝手な男なんですが、その選択にすごく優しい男だなと感じたんです。それが作品全体の爽やかさにも繋がっているのかもしれません。

瀧内:“身体の言い分”に賢治と直子は正直になっていくわけですが、下田逸郎さんによるエンディングテーマ「紅い花咲いた」の歌詞のとおり、本能のままに生きることは「とっても気持ちいい」ものなんだと思います。いろんなしがらみがある現代ですが、自分がどう生きるかは自由なんだと改めて感じましたし、そんなふうに生きる直子を純粋に羨ましいと思いました。

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(取材・文=石井達也/写真=池村隆司)

■公開情報
『火口のふたり』
8月23日(金)より、新宿武蔵野館ほか全国公開
出演:柄本佑、瀧内公美
原作:白石一文『火口のふたり』(河出文庫刊)
脚本・監督:荒井晴彦
音楽:下田逸郎
製作:瀬井哲也、小西啓介、梅川治男
エグゼクティブプロデューサー:岡本東郎、森重晃
プロデューサー:田辺隆史、行実良
写真:野村佐紀子
絵:蜷川みほ
タイトル:町口覚
配給:ファントム・フィルム
レイティング:R18+
(c)2019「火口のふたり」製作委員会
公式サイト:kakounofutari-movie.jp/

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