劇団ひとりが語る、『べしゃり暮らし』演出で活かされたキャリア 「お笑いって全部詰まってる」

「きついこともいっぱいあった」

ーーひとりさんご自身もお笑い芸人としてはもちろん、役者としても活躍されています。本作の演出を手がけるにあたって、今までのキャリアが活かされた部分はありますか?

ひとり:いっぱいありますね。演技をする時に、心の中じゃ「このシーンにこのセリフだとずれるな」と思うことがあるんです。でも、正直物語の根幹には関係ないし、僕がここで何か言うことで現場を止めたりするのも良くないので、そのセリフを読むこともあります。今回、そういったことは極力避けたかった。どの役者の方にも納得していただいた上で演じてもらいたかったので、細かく「これは大丈夫ですか?」「言いづらくないですか?」ということを聞きましたし、現場でその都度セリフを削ったり、言い回しを変えたりと常に対応していました。

ーー執筆活動や、監督、脚本と、これまでひとりさんが幅広い活動を続けられた理由はなんだと思いますか?

ひとり:今の質問の答えにはなってないかもしれないですが、一人でコントをやって、ネタを作って、衣装を決めて、稽古をして……若い頃はそんなことしかしていない訳です。その時に培ったものだけで、今も芸能生活をやっている感じはしますね。

 劇団ひとりという名前のくせに、どこかの劇団にいた訳ではないから誰かから演出方法を学んだこともないですが、このキャラクターだったらこういう衣装が合うのかなと思いながらそこらへんの店を歩いたり、喋り方はこういう方が世界観が出るかなと工夫したり……どれも、芸人としてコントをやるにあたってずっとやってきたことです。例えば小説も、ネタで独白劇をやっていたから、その延長線上で一人称で文字に起こして書いていったイメージです。そういう意味でいうと、お笑いって全部詰まってるんですよね。お笑いでは、自分で話を作って、自分で演出して、そのイメージ通りに自分が演じる必要がある。だから、お笑いの世界って(ビート)たけしさんという先輩が体現している通り、いろんなことができる人が多いんだろうなと思います。芸人は、そういう基礎体力を若い頃から作っているんです。

ーー今後もっと演出をやってみたいという思いは強まりましたか?

ひとり:すごく強くなりましたし、「必要は発明の母なり」という言葉が身にしみてわかりました。きついこともいっぱいあったんですよ。絶対いいシーンになると思って、現場で撮ってみたら全然うまくいかないこともあって。現場でやってみるまではわからないというのは、今回学んだことですね。でも「こんなの絶対うまくいかない」と思いきや、仕上がりを見たらすごく良かったシーンもたくさんありました。それは僕だけの力じゃなくて、現場のスタッフさん、役者さん達みんなが、厳しい状況を力に変えて120パーセントの力を出してくれたおかげですね。

ーー本作の反響も楽しみです。

ひとり:今一番自分が気にしているのは、“原作ファン”という陪審員たちがどういう判決を下すのかですね(笑)。実際にドラマを観るのは原作ファンだけじゃないし、原作ファンの顔色ばかり伺っていてもしょうがないんだけど、今回は原作になるべく忠実にやろうとして、脚本もそういう作りになっているので、どうしても気にはなっています。まあ怖いから結局エゴサーチはしないんだろうけど(笑)。

(取材・文・写真=島田怜於)

※辻本潤の「辻」は二点しんにょうが正式表記。

■放送情報
土曜ナイトドラマ『べしゃり暮らし』
テレビ朝日系にて、7月スタート 毎週土曜23:15~0:05放送
出演:間宮祥太朗、渡辺大知
原作:森田まさのり『べしゃり暮らし』(集英社)
脚本:徳永富彦
演出:劇団ひとり
音楽:高見優、信澤宣明
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:浜田壮瑛(テレビ朝日)、土田真通(東映)、高木敬太(東映)
制作:テレビ朝日、東映
(c)テレビ朝日
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