木竜麻生が語る、『鈴木家の嘘』での大きな経験と女優としての今後 「自分のことをもっと豊かに」

「自分のことを、もっともっと面白がれたら」

ーーで、結果的に、『菊とギロチン』のオーディションを見事勝ち抜いて……。

木竜:そうですね。なので、『菊とギロチン』の現場では、ホントにいっぱいいっぱいだったというか、もうただガムシャラに頑張るだけだったんですけど、その現場が終わって、この『鈴木家の嘘』の現場に入ってからは、またちょっと意識が変わったのかなっていうのは、自分でも思いますね。就職活動をしないで女優の道を進むぞっていう覚悟とは、もう一個違う覚悟を決めたというか。『鈴木家の嘘』で、すごい大先輩たちとご一緒したのはもちろんですけど、こうやって映画というものに生命を注いでやっている人たちがいて……岸部さんだったり加瀬さんだったり原さんだったり、みなさんやっぱり中身がすごく深いんですよね。それまでやってきたことだったり経験してきたことだったり、見ている先がすごく深くて。「あ、こういう覚悟でやっている人たちと、私はご一緒できたんだな」って思いましたし、またこの人たちとやりたいと思ったら、自分もそこに追いついていかなきゃいけないんだなって思って。そのためには、もっともっと自分のことを知らなくちゃいけないなって思ったんですよね。

ーーなるほど。そこで先ほどの「自分のことをもっと知ろうと思った」という発言に繋がってくるわけですね。

木竜:そうなんです。何か私は、小さい頃から自分っていうものが、ずーっとわからなかったんですよね。まあ、今もあんまりわかってないんですけど(笑)。ただ、小学校とか中学とか高校とか、自分はすごく優等生みたいな感じできていて、わりと卒なくやってきた感じがあって。兄と弟がいるから、男の子とのほうが会話が楽だなあみたいなタイプで、学校でもわりと先生の言うことは聞くし、でも友達にはちょっとやんちゃな女の子とかもいて、とはいえおとなしい子とも話せるしみたいな。ホント普通というか、わりと卒なくやれるタイプだったんですよね。

ーー特に何かをこじらせるわけでもなく。

木竜:あ、そうです、そうです。ちょっと何かやっかみを言われるとかはありましたけど、それを特に気にするとかでもなく、ホント普通に生きてきたんですよね。でも、このお仕事を始めてから、本当の自分っていうか、別にいい子じゃない私もいるなっていうのを思うようになって。それは、結構最初の頃に共演した方にも言われたんですよね。「ホントは何か心のなかにグチャグチャしたものがあるでしょ?」って。

ーーほほう。

木竜:それを言われたときに、いい子じゃない私というか、みんながイメージする私じゃない私を面白がってくれる人もいるんだなって思ったんですよね。で、そうなったら今度は、「自分って何だろうな?」って思い始めるようになって。普通に生活したり、今こうしている私も、「本当は誰なんだろうな?」とか、素直に思ってしまうんですよね。

ーー面白いですね。インタビュアーとしては、ちょっと不安になってきましたけど(笑)。

木竜:ははは。ですよね(笑)。でも、そういう感じで、「今、こうしてしゃべっているのは、誰なんだろうな?」とか「今、ご飯を食べて美味しいって思ってるのは、誰なんだろう?」とか考えてしまうことが、最近多いんですよね。それが実際のお芝居と、どうリンクするとかはまったくわからないんですけど、こうやって作品だったり役だったり、相手の役者さんだったり監督だったりと向き合うなかで、知らない私というか、それまでは見えてなかった自分が見えてくるんじゃないかなっていうのは思っていて。何かそういうふうなのが、今はあるような気がします。

ーー女優という仕事をしていくなかで、「こんな自分もいたんだ」って新しい発見をしたり?

木竜:ああ、もうホントにそうです。むしろ、「ここに、こんな扉があるんだよ」って、みなさんに叩いてもらったというか、自分で開いたというよりも、みなさんに叩いてもらって「あ、あったんですね」っていう感じなんですよね(笑)。だから、今回の映画でも、お兄ちゃんに対して本を投げつけるシーンとかで、「ああ、自分には、誰かのことが憎いとか腹が立つ、死ぬほどムカつくっていう気持ちが、ちゃんとあるんだな」って思いましたし、そういうのはやっぱり、監督が先に見抜いてくれて、出てきた私だったんですよね。そうやって、自分でも知らなかった自分みたいなものを見つけてもらっている感じはありますね。

ーーそういう経験は、木竜さんにとって楽しいことなんですか?

木竜:うーん、楽しいっていうよりも怖いですね(笑)。もちろん、「楽しい!」って思うタイミングもあるんですけど、嬉しいけど怖いっていうのが正直なところかもしれないです。

ーーなるほど。ちなみに、木竜さんは今後、どんな女優さんになっていきたいと思っているのですか?

木竜:うーん、今までと変わらずというか、今回の『鈴木家の嘘』を踏まえて、やっぱり映画がやりたいなって思いました。まだまだ知らないことだらけというか、まだまだ知りたいことがたくさんあるので。ただ、そのためには、もっと自分自身の経験だったり、私っていう人間をもっともっと豊かにしていかないといけないと思うので、そういう意味では、あまり食わず嫌いはせずにいろいろなお仕事をやってみて、自分の目とか耳とか感覚でいろんなことを感じていけたらなって思っています。

ーーこうしてお話を聞いていて、木竜さんには、まだまだ開けてない扉がいろいろありそうだなって思いました。

木竜:ホントですか(笑)。でも、そうですね。そうやって面白がってもらえたら嬉しいなって思いますし、私も自分のことを、もっともっと面白がれたらいいなって思っています。

(取材・文=麦倉正樹/写真=服部健太郎/スタイリング=TAKAFUMI KAWASAKI (MILD) /ヘアメイク=RYO)

■リリース情報
『鈴木家の嘘』
Blu-ray&DVD発売中

【Blu-ray】
価格:4,800円+税
仕様:本編133分+映像特典/16:9LBビスタサイズ/片面2層/音声:<本編>リニアPCM5.1ch/字幕:なし/1枚組

【DVD】
価格:3,800円+税
仕様:本編133分+映像特典/16:9LB/片面2層/音声:<本編>ドルビーデジタル5.1ch/字幕:なし/1枚組

※仕様は変更となる場合がございます。

<特典映像>
・メイキング特番:『鈴木家の嘘』ができるまで
・主題歌:「点と線」(明星/Akeboshi)MV
・劇中CMフルバージョン
・舞台挨拶ダイジェスト
・録りおろしオーディオコメンタリ―
・予告編集

出演:岸部一徳、原日出子、木竜麻生、加瀬亮、岸本加世子、大森南朋
監督・脚本:野尻克己
配給:松竹ブロードキャスティング/ビターズ・エンド
発売・販売元:TCエンタテインメント
(c)松竹ブロードキャスティング

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8月14日(水)

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