山田裕貴が『なつぞら』で向き合った人生の岐路 「雪次郎は逃げた」

 結果として、雪次郎は蘭子の言葉を機に北海道へ戻ることに。山田は「雪次郎は逃げた」と語気を強めるも、小畑家の愛があってこそと彼の生き様にも共感を示す。「すごく悔しかったと思うんですよね。たぶん僕だったら諦めずに続けるので、雪次郎は逃げたんだなって。でも“良い逃げ”というか、敗北者じゃない。人生の岐路だっただけで、負けてはない。愛の深い、あの家を選んだっていうのは雪次郎だからだろうなと思うし、そういう家族がいてくれるのが素敵。逃げたんじゃなくて、そこに身を委ねたんだろうなって思うんです」。

 一方で、雪次郎が「雪月」に帰る場面は、山田にとっても役者として重大な局面となった。「台本には書いていないのに、自然と涙が出てきて。雪之助さんやとよばあ(小畑とよ/高畑淳子)が“いやぁ、いい。よかった”って言ってくれたんですよ。そこでやっと、自分としても認めてもらえたし、雪次郎として許してもらった気がしました。奇跡的な巡り合わせを感じて、パラレルワールドだなって。だから、楽しさしかないです。自分で生きている人生より楽しいかも(笑)」。

 度重なる覚悟と挫折によって、一回りも二回りも成長して家族のもとへ戻った雪次郎。そして演じる山田もまた、本作を通じて強く、大きくなった。もがいた過去を助走に変えて、菓子職人としての道を駆け抜ける雪次郎の姿に役者・山田裕貴を重ねながら、物語の行方を見届けたい。

(取材・文=nakamura omame)

■放送情報
連続テレビ小説『なつぞら』
4月1日(月)〜全156回
作:大森寿美男
語り:内村光良
出演:広瀬すず、松嶋菜々子、藤木直人、岡田将生、鈴木杏樹、安田顕、小林隆、音尾琢真、仙道敦子、北乃きい、吉沢亮、中川大志、山田裕貴、清原翔、渡辺麻友、伊原六花、橋本さとし、新名基浩、吉田隼、山口智子、高畑淳子、草刈正雄 ほか
制作統括:磯智明、福岡利武
演出:木村隆文、田中正、渡辺哲也ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/natsuzora/

関連記事