井浦新が体現する苦悩 『なつぞら』で描くベテランと若手の対立

 なつ(広瀬すず)は坂場(中川大志)から突然のプロポーズを受けた。『なつぞら』(NHK総合)第105話では「僕の気持ちは、ずっと分かっていたでしょう」と言う坂場に「全然わかりませんでした」となつは一瞬、困惑する。そして、その後「はい。わかりました」と返事をした。この答えは坂場にとって思いもかけないものだったようで、今度は坂場が戸惑ってしまった。

 だが、なつたちの長編映画制作は難航気味だった。坂場は従来のやり方とは違う方法で映画をつくろうとする。坂場のこだわりは強く、なつが描くキャラクターになかなか納得しない。その結果、脚本づくりが遅れ、予定の8月になっても作画の作業に入れずにいた。見かねた仲(井浦新)が坂場たちに声をかけるのだが、坂場や神地(染谷将太)は仲の意見を受け入れようとしない。仲に対する坂場の態度に、なつは苛立ちを見せる。

 なつは仲の本音を聞くことになる。「仲さんは、あの人(坂場)がやろうとしていることは間違っていると思いますか」というなつの問いに仲は「わからない」と答え、「アニメーターとして、自分の限界を突きつけられたみたいで悔しいんだ」と本音を明かした。井浦は、これまで、ベテランアニメーターである仲の冷静な姿を演じていた。しかしこの時見せた表情は、若手の意志を理解できない悔しさやアニメーターとして力不足な自身に対する憤りを表す表情だった。仲と坂場は違う価値観だが、2人のアニメに対する強い思いが伝わってくる。

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