福地桃子「ずっとピュアに演じたい」 『なつぞら』“ヒロインのカウンター”としての夕見子の魅力

 そんな夕見子は、不器用ながらに、これまでになつの背中を押すシーンが多くあった。そういった瞬間での夕見子なりのエネルギーを使った伝え方に、「夕見子の強くて優しい部分を自分自身が感じられた。夕見子のことが好きになった」と明かしている。そこで福地は、「お芝居をする中で、役を好きになるということは、すごく大事なのかもしれない」と、この役、この作品から、教わることになったという。

 先述したように、あからさまな悪役や敵といった存在がいない本作だが、なつにとっての敵といえば「時代」や「境遇」そのものであったように思える。そんな彼女を周囲のキャラクターの一人ひとりが支え、夕見子もまた、なつと互いに刺激を与え合いながらその役割を担ってきた。福地は「夕見子はトラブルメーカーというふうに見られているんじゃないかな」と、役を俯瞰して見たときに感じたそう。しかし、「いい意味でも、悪い意味でも“真っ直ぐ”で、突拍子もない行動を取っているという自覚がなく、どれも自身の意志を信じて取っている行動」だとも話し、だからこそ福地は夕見子のことを、「ずっとピュアに演じたい」と思ったという。さらに、夕見子の一挙一動は「反抗心からくるものではない」とも述べている。達観した、大人びた態度を見せながらも、そういったある種の“子どもらしい一面”が、多くの観る者の心を掴んでいる理由の一つでもあるのだろう。

 そんな福地だが、昨年は『あなたには帰る家がある』(TBS系)、『チア☆ダン』(TBS系)と同枠のドラマに2クール連続で出演し、その存在感を少しずつ示し始めた。そして今年は、映画初出演にして初主演を務めた『あまのがわ』が公開。その直後に封切られた『あの日のオルガン』や『チア☆ダン』と、有望視される若手が集う作品にキャスティングされているあたり、彼女への期待度の高さがうかがえる。

 まだデビューしてキャリアの短い福地だが、彼女にとって『なつぞら』が、早くも迎えた転換期であることは間違いなさそうだ。本作でもそうだが、これからますますドラマ・映画界を引っかき回してくれることに、大いに期待である。

■折田侑駿
映画ライター。1990年生まれ。オムニバス長編映画『スクラップスクラッパー』などに役者として出演。最も好きな監督は、増村保造。Twitter

■放送情報
連続テレビ小説『なつぞら』
4月1日(月)〜全156回
作:大森寿美男
語り:内村光良
出演:広瀬すず、松嶋菜々子、藤木直人、岡田将生、戸次重幸、工藤阿須加、吉沢亮、北乃きい、清原翔、大原櫻子、福地桃子、平尾菜々花、小林綾子、草刈正雄ほか
制作統括:磯智明、福岡利武
演出:木村隆文、田中正、渡辺哲也ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/natsuzora/

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