『あなたの番です』とうとうマンション住人に犠牲者が 些細なゲームが現実になる不安と恐怖を描く

 そうはいっても前述の浮田の告白によって示されたのは、“次の番”が浮田に来たのだということに他ならない。シンイー(金澤美穂)が引いた紙に書かれていたのは、浮田が書いた赤池美里の名前であるとするならば、“殺して欲しい人を殺してもらった”浮田はルールに従わざるを得なくなる。そして今回のクライマックスで久住(袴田吉彦)が、自分に似ているからという理由で「俳優の袴田吉彦」の名前を書いたことを菜奈に明かし、撮影現場で襲撃される袴田吉彦。バットを持って襲いかかるのは3人組だっただけに、浮田たち201号室の面々と推察せずにはいられない。ルールに則れば、次は菜奈が書いた細川(野間口徹)を久住が殺す番が来て、その次には菜奈が誰かを殺さなくてはいけなくなるだけに、ドラマが大きな動きを見せる兆しといえるだろう(もっとも、これまでも犠牲になった人たちを誰が殺めたのかと1つも明示されていないことが何だか気に掛かるのだが)。

 ところで、久住が「俳優・袴田吉彦」について話すシーンで菜奈が口ずさんだのは、99年に袴田吉彦が一度だけバラエティ番組の企画でCDデビューした時に発売した「本トの気持ち」のサビの一節というなんともユーモラスな小ネタが登場した。思い返してみれば、藤井(片桐仁)がドクター山際の死の直後に脅迫文を見つける週刊誌の裏のページに、一瞬だけ「袴田吉彦」の名前が確認できたが、ここへ繋がるというわけだ(今回その週刊誌のページが映し出されるが、袴田吉彦のスキャンダルだという。そういえば10月期に放送された『ブラックスキャンダル』(読売テレビ・日本テレビ系)でも袴田の“アパ不倫”スキャンダルがネタになっていたはずだ)。フィクションであるとはいえ、ドラマと現実の壁を超えて物語を展開させるのはなかなかの荒技ではあるが、2クールに渡って描くこのドラマに必要な緩急を与える、ちょっとした遊び心と見えて好印象だ。 

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■番組情報
日曜ドラマ『あなたの番です』
毎週日曜22:30〜放送
出演:原田知世、田中圭、西野七瀬、浅香航大、奈緒、山田真歩、三倉佳奈、大友花恋、金澤美穂、坪倉由幸(我が家)、中尾暢樹、小池亮介、井阪郁巳、荒木飛羽、袴田吉彦、片桐仁、真飛聖、和田聰宏、野間口徹、林泰文、片岡礼子、皆川猿時、徳井優、田中要次、長野里美、阪田マサノブ、大方斐紗子、峯村リエ、竹中直人、安藤政信、木村多江、生瀬勝久
企画・原案:秋元康
脚本:福原充則
演出:佐久間紀佳ほか
チーフプロデューサー:池田健司
プロデューサー:鈴間広枝、松山雅則
制作協力 :トータルメディアコミュニケーション
製作著作 :日本テレビ
(c)日本テレビ

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