『夏目友人帳』『となりのトトロ』など日本アニメ映画が中国で相次ぐヒット その社会的背景とは?

日中アニメは競業と協業の時代へ

 現在では中国産のアニメーション作品の質も向上している。日本アニメのブランド力はまだ大きいが、国産アニメーションから年間興行収入トップクラスの大ヒット作が出てきており、今後ますます大きな資本も投下されるだろう。一度は締め出そうと試みた日本アニメを再度開放したのは、自国のコンテンツの競争力に自信をつけていることの証でもあるだろう。日本アニメが今後も存在感を保つためには、一層のオリジナリティと質の向上が求められる。

 日中アニメはすでに競争する間柄ではあるが、TVアニメではすでに中国の資本が入ったアニメ作品は数年前から珍しくなく、日中の協業が始まっている。そして昨年5月に締結が発表された「日中映画共同製作協定」は、両国の共同製作映画をさらに増やすことになるだろう。中国の映画市場は、年間の外国映画の上映本数に厳しい制限を課しているが、この協定の下で制作された作品は、中国では外国映画とカウントされない。

 日本アニメも今後は単に輸出するだけの存在ではなく、企画段階から日中で共同開発する作品が増えていくことになるだろう。今日本と中国のアニメーション業界はより接近していくだろうし、協業の中でこれまでにはなかった作品が生れるかもしれない。競業と協業の中で、西欧とは違うアジア独特の文化が発展していくことを筆者は望んでいる。

参考文献

※1南山経営研究第30巻「中国における日本アニメ産業の経営状況と課題」P243 孔 ヨウ(ヨウは火に華が正式表記)、薫 詳哲 著 南山大学経営学会刊

※2 熱風 2016年10月号「中国のアニメ映画」P15 コルピ・フェデリコ 著 スタジオジブリ出版部刊

※3 新世紀人文学研究第2号 「中国人留学生の作品に関する一考察 特集 日本語教育史からみた日中戦争」P195 橋本大志 著 新世紀人文学研究会刊

※4 調査情報 2017年3-4月号 No.535「等身大でとらえよう ~中国・日本~ 目覚めた「動画」王朝 ~アニメはどこへ向かうのか~」P31 大山寛恭 著 TBS
メディア総合研究所刊

※5 TOBIO Critiques #3 2017年9月号「中国メディアミックスにおける日本メディアの影響 ―戦時下・戦後のメディアミックスの流れを中心に―」P93 チョウ・カンカ 大田出版刊

■杉本穂高
神奈川県厚木市のミニシアター「アミューあつぎ映画.comシネマ」の元支配人。ブログ:「Film Goes With Net」書いてます。他ハフィントン・ポストなどでも映画評を執筆中。

■販売情報
『劇場版 夏目友人帳 ~うつせみに結ぶ~』
Blu-ray&DVD発売中
原作:緑川ゆき/月刊LaLa(白泉社)連載
総監督:大森貴弘 監督:伊藤秀樹 脚本:村井さだゆき 妖怪デザイン・アクション作監:山田起生
サブキャラクターデザイン:萩原弘光 美術:渋谷幸弘 色彩設定:宮脇裕美 編集:関 一彦 撮影:田村 仁・川田哲矢 音楽:吉森 信 アニメーション制作:朱夏 製作:夏目友人帳プロジェクト 配給:アニプレックス
(c)緑川ゆき・白泉社/夏目友人帳プロジェクト
公式サイト:http://natsume-movie.com/

■作品情報
『君の名は。』
原作・脚本・監督:新海誠
作画監督:安藤雅司
キャラクターデザイン:田中将賀
音楽:RADWIMPS
主題歌(いずれも 作詞・作曲:野田洋次郎):RADWIMPS「夢灯籠」「前前前世(movie ver.)」「スパークル(movie ver.)」「なんでもないや(movie ver.)」
声の出演:神木隆之介/上白石萌音/長澤まさみ/市原悦子
製作:「君の名は。」製作委員会
制作プロダクション:コミックス・ウェーブ・フィルム
配給:東宝
(c)2016「君の名は。」製作委員会

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アニメシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる