ノルウェーで大ヒット 『THE QUAKE/ザ・クエイク』が描く、災害に直面した家族の絆と社会問題
『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』(2018年)の冒頭で強烈な印象を残し、『レヴェナント:蘇えりし者』(2015年)などのハリウッド映画にも出演していたノルウェーの俳優クリストファー・ヨーネルが主演し、ノルウェー国内で大ヒットを果たしたディザスター・ムービーが、『THE QUAKE/ザ・クエイク』だ。
切り立ったフィヨルドや、オーロラが見られることで、自然に注目されがちなノルウェー。その国の映画といえば、近年では『ウトヤ島、7月22日』(2018年)、『テルマ』(2017年)、『サーミの血』(2016年)、『トロール・ハンター』(2010年)などの質の高い作品がコアな映画ファンを中心に話題となったように、大規模ではないが社会問題を絡めながら見応えのある映画を撮るような、クレバーな作品が多い印象がある。
そんななか、本作『THE QUAKE/ザ・クエイク』は、それにくわえてハリウッドのアクション映画を思わせるような、大スケールの天変地異をも描く挑戦作。その試みは成功し、本国では3週連続で興行収入1位に輝き、2018年度の自国作品の興行収入トップとなった。ここでは、そんな本作の人気の理由や、見どころを解説しながら、描かれているテーマを考察していきたい。
本作は、2016年公開の『THE WAVE/ザ・ウェイブ』の設定を一部引き継いでいる。この作品を見なくては本作が分からないということはないが、未見の観客のために解説しておいた方が親切だろう。『THE WAVE/ザ・ウェイブ』は、岩山の崩れによる大津波の脅威を描いたものだった。舞台となるのは、ノルウェーが観光地として誇り、世界遺産にも選ばれたフィヨルド群「ガイランゲルフィヨルド」である。
だが専門家によると、そこで大規模な崩落が起きてしまうと、その衝撃によって津波が発生し、ものの10分ほどで近隣の村々を飲み込んでいくほどの惨事が起こる可能性があるのだという。これは映画のなかの話だけではなく、現実にいつか起こるといわれている災害である。だから、とくにノルウェーの人々にとって、その危機は人ごとではない。