長谷川博己を立ち直らせた安藤サクラの言葉 『まんぷく』が描いた“きれいごと”から学ぶべきもの
そしてもう1つ、今週の『まんぷく』での印象的なシーンが、福子と世良(桐谷健太)が話す喫茶点での場面である。ライセンス契約が広まらない中で、どうにか世良に力を貸してほしいと懇願する福子。
「きれいごとは通りませんか?」
確かに、特許を公開して業界全体、社会全体のことを考えることはきれいごとなのかもしれない。それでも、福子はたとえきれいごとであっても貫き通さなければならないことがあると考えた。その理由は、福子の言葉を借りれば「それができなくなったら、萬平さんはもう何も作れなくなる」からだ。萬平の発明の原動力はいつだって、世のため、人のためだった。その思いがあったからこそ、「ダネイホン」も「まんぷくラーメン」も世の中に送り出されてきた。きれいごとという言葉には確かに辛辣な響きがある。偽善のニュアンスがどうしてもまとわりつく。だが、福子はその“きれいごと”に賭けた。
「萬平さんにはきれいごとを、正しいと思うことを貫いてほしいんです」
『まんぷく』の放送も残りあとひと月。これまでの歩みの中にも、ひょっとしたらきれいごとはあったのかもしれない。それでも福子たちは、その道を貫き通してきた。萬平だけではなく、現代の私たちも忘れかけていたものを今後も本作から見つけていきたい。
(文=國重駿平)
■放送情報
NHK連続テレビ小説『まんぷく』
10月1日(月)〜2019年3月30日(土)【全151回】
作:福田靖
出演:安藤サクラ、長谷川博己、松下奈緒、要潤、大谷亮平、桐谷健太、瀬戸康史、岸井ゆきの、松井玲奈、深川麻衣、中尾明慶、毎熊克哉、加藤雅也、牧瀬里穂、松坂慶子ほか
語り:芦田愛菜
制作統括:真鍋斎
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/mampuku/