今年はトランプ大統領が最低主演男優賞に “最低”の映画を決めるラジー賞の社会風刺とユーモア

 毎年映画界最高の栄誉であるアカデミー賞の前日に、ひっそりと授賞式が行われる“ラジー賞”ことゴールデン・ラズベリー賞。その年のワースト、つまりは“最低”の映画を、アカデミー賞さながらに1000名を超える会員からの投票によって決定する。そこには明確な社会風刺としての意味合いと、ユーモアに富んだ選定基準が見え隠れしており、毅然とした批評文化が確立したアメリカらしさが現れていているのだ。

 過去の最低作品賞受賞作を見てみると、映画史に残る空前の大赤字を記録したテレンス・ヤングの『インチョン!』であったり、ポール・ヴァーホーベンの伝説的凡作『ショーガール』に、そして劇場に行った誰もが呆然としてしまった『バトルフィールド・アース』など、スカスカすぎて逆に語りたくなるような作品が名を連ねる。他にもトム・クルーズ主演の『カクテル』やM・ナイト・シャマラン監督の『エアベンダー』だったり、大ヒットシリーズの完結編『トワイライト・サーガ/ブレイキング・ドーンPart2』、さらには『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』など、「記憶には残らないけど観ている間は何となく楽しかったし、それに何よりポップコーンが美味しかったから良かった」という気分を味わえる憎めない映画がずらり。

 先日発表された第39回では、イータン・コーエンという字面だけ見たらアカデミー賞常連の兄弟監督の弟のような感じがする監督が手がけた『Holmes & Watson(原題)』が主要4部門を席巻。誰もが知る名探偵シャーロック・ホームズをラジー賞の常連俳優ウィル・フェレルが、助手のジョン・ワトソンをアカデミー賞候補歴のあるジョン・C・ライリーが演じ、さらにモリアーティ教授役にはイギリスの名優レイフ・ファインズときた。そんな座組みで作り出される下品なコメディ映画となれば、もうラジーの大好物となることはハナから目に見えており、下馬評通りの圧勝となったわけだ。

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