『はじこい』から学ぶことは思いのほか多い? 横浜流星が“迷える大人たち”の前に登場したワケ

 さて、順子はと言えば、東大受験に失敗した後は、塾講師という仕事をぼんやりとこなしながら人生をさまよっていた一人であった。母親からはしょっちゅう、仕事のことや結婚のことで小言を言われ続け、自分でも何をしたら正解かなんて分かっていなかった。“自由”は大人の特権であるものの、そもそもその“自由”を何に行使すればいいのか……。「人生一度くらいはワクワクしたい。ときめきたい。ずっとそれを探している気がするけど見つからない。見つかる気がしない」と、順子は口にする。

 そんな順子のもとに現れたのが匡平(横浜流星)である。自分とは違い、父親には言うべき不満をぶつけ、その上で東大受験を志願してきた匡平。第2話で、匡平のことを絶対合格させたい、匡平に“夢中”であると酔いに任せて溢していたように、彼女に“ワクワク”を届けうる存在が登場したのだ。“ときめき”、“ワクワク”。それこそまさに大人になった順子が見失っていたものなのだろう。順子だけではない。雅志も一真も含めた“大人”が、このドラマの中で“ワクワク”を取り戻そうとしているのかもしれない。“大人”になっていつの間にか失ってしまったもの、その一つはきっと人生の“ワクワク”であり、“ときめき”なのだ。自由を与えられても、それだけで幸せになるとは限らないのだろう。そんなことを考えると、このドラマから学べることは思いのほか多いように思える。

(文=國重駿平)

■放送情報
火曜ドラマ『初めて恋をした日に読む話』
TBS系にて、毎週火曜22:00~
出演:深田恭子、永山絢斗、横浜流星、中村倫也、安達祐実、石丸謙二郎、鶴見辰吾、生瀬勝久、檀ふみ、高橋洋、皆川猿時
原作:『初めて恋をした日に読む話』持田あき(集英社『クッキー』連載)
脚本:吉澤智子
プロデューサー:有賀聡(ケイファクトリー)
演出:福田亮介ほか
製作:ケイファクトリー、TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/hajikoi_tbs/

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