センセーショナルで深い意義があるオムニバス映画に 『21世紀の女の子』が意味するもの
だが、そのような高邁な理想が、本作の全ての監督に共有され、きちんと足並みが揃っているわけではないというのも確かであろう。映画監督としての実力の違いはもとより、誰もが山戸監督のように、明確に大きなスケールでものごとを考えられるわけではない。今回、「ジェンダー」というゆるい共通のテーマがあったが、それを描くときに、既存の古い価値観にまだ振り回されている作品もあるように感じられた。“若さ”は、新しい世界を切り拓く鍵にもなるが、若さゆえに現状の矛盾を無批判に受け入れてしまう場合もある。しかし、そこを山戸監督が矯正してしまっては、女の子の自由な感性を踏みにじってしまうことになる。本作は、イデオロギーとして、ある種の保守性すらも内包しなければならないジレンマも存在するのだ。
そのなかにあって、例えば東佳苗監督、モトーラ世理奈主演の『out of fashion』は、かつて憧れていた男性への幻滅から、自身の自立へとつなげていく成長物語になっていて、しっかりと「21世紀の女の子」像を希望を持って描けていると感じたし、竹内里紗監督、瀧内公美と朝倉あき主演の『Mirror』は、性的マイノリティでありながら、男性が求めるものを提供しなければ表現活動を続けていくことができないジレンマを持った女性の写真家の苦しみという、興味深いテーマが存在する作品で素晴らしかった。そして、批判などどこ吹く風という態度で撮られた、山中瑶子監督の、中華料理店の回転テーブルを使った異様な作品『回転てん子とどりーむ母ちゃん』も、常識を超越した力を持っていて、山戸監督に挑戦を仕掛けている。
■小野寺系(k.onodera)
映画評論家。映画仙人を目指し、作品に合わせ様々な角度から深く映画を語る。やくざ映画上映館にひとり置き去りにされた幼少時代を持つ。Twitter/映画批評サイト
■公開情報
『21世紀の女の子』
全国公開中
企画・プロデュース:山戸結希
エグゼクティブ・プロデューサー:平沢克祥、長井龍
コプロデューサー:小野光輔、平林勉、三谷一夫
製作:21世紀の女の子製作委員会(ABCライツビジネス、Vap)
製作・配給協力:映画24区、和エンタテインメント
配給:ABCライツビジネス
(c)21世紀の女の子製作委員会(ABCライツビジネス、VAP)
公式サイト:http://21st-century-girl.com/