短いエピソードの中で様々な罪が描かれる 高畑充希主演『メゾン・ド・ポリス』が投げかける疑問符

 ひより(高畑充希)がメゾン・ド・ポリスに新たに持ってきた事件は、マンションの建設現場で野良猫が殺害され青いペンキをかけられる通称「青猫事件」。この序盤の時点で、警察が動物に関わる事件ではあまり動きたがらないという問題にひとつの疑問符を投げかけた、1月25日放送の『メゾン・ド・ポリス』(TBS系)第3話。そんな中で、捜査に乗り気ではないおじさまたちにひよりが言う「大きな事件につながるかもしれないし、芽を摘んでおかないと」という“刑事の勘”の通り、事件現場に見回りに入ったひよりは、そこで青いペンキをかけられた人の死体を発見するのだ。

 一般的に刑事ドラマというジャンルで扱われる事件といえば、殺人や強盗といったものが主流となっているのは言うまでもない。たしかに今回のエピソードでもメインとして描かれるのは、動物虐待死の事件現場で発見された死体にまつわる“殺人事件”だ。しかしながら、野良猫が虐待されたという「動物の愛護及び管理に関する法律」、いわゆる「動物愛護法」の範疇にある犯罪行為がひとつのストーリーの軸となって描かれていたことは見逃せない部分といえよう。

 ここはひとつ法律の勉強がてらに、動物に関する法律をめぐって常々話題に上がる「器物損壊罪」と「動物愛護法」について簡単に整理しておきたい。たとえばペットの命が何らかの形で奪われた時、飼い主の立場で考えると愛する家族の一員を殺されたと感じることだろう。しかし、客観的に捉えると飼い主が所有している財物のひとつであるペットが損壊されたと解釈されてしまう。もうこの時点で疑問に感じる部分が生じるのは否めないが、基本的に刑法で保護されるのは人間の法益か人間同士が形成している社会や国家の法益であるという大前提があり、そこにペットの生命は含まれていないわけだ。

 対象的に「動物愛護法」においては人間と動物とが共生する社会を念頭に置いている点で、そもそもある「社会」というものの意味合いが異なっている。それゆえ、人が所有していない“野良”であっても愛護され得るのであり、もちろん家畜やペットとして飼われる種の動物全般が対象となる。様々な事例をあげるとキリがないのだが、「器物損壊罪」は親告罪であるので仮に自己の所有するペットを傷付けたとしても罪には問われないだけに、それも含めて罰を与えることができる「動物愛護法」のほうがペットや動物にとって良い法律なのかもしれない。けれどもまだまだ様々な課題が残されており、現在も5年刻みに検討と改正が重ねられており、真の意味での共生社会に向けた取り組みが為されているのである。

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