『いだてん』革新的大河ドラマの幕開け! 役所広司が切り拓いたオリンピックへの第1歩
劇中、嘉納は諸々の事情で、オリンピック参加を辞退しようとする。しかし駐日仏大使が持ってきたストックホルムオリンピックのポスターに日本国旗を見つけると、興奮したように指を指す。世界の国旗の中に描かれた日本国旗を見つめる嘉納。じっと日の丸を見つめた嘉納は、「on va s'abstenir.(辞退します)」という言葉を飲み込み、これまでにない明るい表情で参加を表明する。駐日仏大使の手を力強く握り、「オリンピックと柔道の精神は通じる。スポーツで国際的に交わることは、世界平和の実現に役立つでしょう」と話すこの一連のシーンに感極まった視聴者も多いのではないだろうか。“平和の祭典”に日本が参加する。参加することに意義がある。それを強く感じさせる納得の演技だった。
劇終盤、オリンピック参加者を募る大運動会で、嘉納は『いだてん』の主人公・金栗四三と出会う。落伍者が続出する壮絶なマラソンで、ゴールに駆け込んできた四三を見つけた嘉納は、満面の笑みでこう発する。
「いだてんだ!」
日本オリンピックの父・嘉納が“いだてん”と出会うところから始まる第1回。嘉納のオリンピック初参加への奮闘と、四三の登場を最後にする演出によって、視聴者は明治時代から始まる壮大なこの物語に引き込まれていったのではないだろうか。
1959年と1909年が交錯する編集、出演者たちの畳み掛けるようなセリフのやり取り、映画2本分と言ってもいいほどの豪華キャスト……これまでにない新しい大河ドラマの幕が開けた。
■片山香帆
1991年生まれ。東京都在住のライター兼絵描き。映画含む芸術が死ぬほど好き。大学時代は演劇に明け暮れていた。
■放送情報
『いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~』
[NHK総合]毎週日曜20:00~20:45
[NHK BSプレミアム]毎週日曜18:00~18:45
[NHK BS4K]毎週日曜9:00~9:45
作:宮藤官九郎
音楽:大友良英
題字:横尾忠則
噺(はなし):ビートたけし
出演:中村勘九郎、阿部サダヲ/綾瀬はるか、生田斗真、杉咲花/ 森山未來、神木隆之介、橋本愛/杉本哲太、竹野内豊、 大竹しのぶ、役所広司
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/idaten/r/
写真提供=NHK