Sexy Zone 中島健人、王子から“ロミオ”へ華麗なる転身? 『ニセコイ』はキラキラ映画の新機軸に

 さて、話をこの『ニセコイ』という作品自体に引き戻すと、週刊少年ジャンプで連載されていた本作は、いわゆる少年漫画のジャンルとしては決して多くないラブコメディ作品。突拍子もないボーイ・ミーツ・ガールがあって、ぶつかり合いながら惹かれあっていくメインカップルの姿を綴っていく表面的な部分では、少女漫画におけるラブコメディとさほど違いはないのだけれど、コミカルさのベクトルがいかにも少年漫画的であり、他にも明らかな違いがいくつも見受けられる。

 たとえば、楽という男子の目線で物語が進められるにもかかわらず、中条あやみ演じる千棘との間に割って入る“恋のライバル格”が池間夏海演じる小野寺小咲と、島崎遥香演じる橘万里花であり、彼女たちの登場によって恋愛感情が動かされるのは千棘の方。楽にはその影響はほとんどなく、あくまでも小咲から千棘に向かってちょっとずつ、とはいえスムーズに方向転換していく。映画の構図の基礎としてあるイマジナリーラインのようなものが目に見えないストーリー上にもあるとすれば、本作の青春恋愛描写はそれを無意識のうちに超越してしまっているようだ。

 そして男子目線での恋愛の障壁となっているのは、DAIGO演じるクロードという千棘のボディガードの存在。ライバルとは異なり、あくまでも主人公の覚悟や本気度を示すためだけの存在、あえて言うならばKing & Princeの平野紫耀が主演を務めた『honey』での高橋優が演じた役柄に近いニュアンスを感じなくもないが、やや遠いか。恋愛という要素とは少し離れて、主人公がひとりの人間として成長していく過程の上にある、超えて然るべき障壁に過ぎないという点で、いかにも少年漫画らしい部分であるといえるだろう。

 もっとも、本作を通して少年漫画と少女漫画を比較するのであれば、避けては通れない大きな違いは主人公2人の設定そのものにあるのではないだろうか。かたや極道の一家の跡取り息子で、もう一方はアメリカのギャングの一人娘。しかも両方の組織が抗争勃発寸前という、典型的な『ロミオとジュリエット』展開にあるわけだ(前述したように、劇中劇として『ロミジュリ』が登場するのは、それをあえて強めるための要素だ)。

 このあまりにも古典的な恋愛の障壁となる設定は、リアリティの中にあるちょっとしたロマンを重視する少女漫画の世界では忌避されがちな設定であったように思える。身分の違いを示すのであれば『花より男子』のような家柄の差や、『今日、恋をはじめます』のような学内のカーストによる差のほうがわかりやすく、それでいて共感されやすくロマンティックだ。そこをあえて、正反対のベクトルで攻め入り、古めかしさを顧みずにコミカルさという“面白み”を重視する。もしこれが“キラキラ映画”に改革をもたらす狙いだとするならば、なかなか挑戦的で面白いやり方だろう。

■久保田和馬
映画ライター。1989年生まれ。現在、監督業準備中。好きな映画監督は、アラン・レネ、アンドレ・カイヤット、ジャン=ガブリエル・アルビコッコ、ルイス・ブニュエル、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■公開情報
『ニセコイ』
全国東宝系にて公開中
監督:河合勇人
原作:古味直志『ニセコイ』(集英社『ジャンプコミックス』刊)
主演 中島健人、中条あやみ、DAIGO、島崎遥香、岸優太、松本まりか、青野楓、河村花、池間夏海
制作プロダクション:ファイン エンターテイメント
配給:東宝
(c)2018映画『ニセコイ』製作委員会
公式サイト:http://nisekoi-movie.jp

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